新型コロナ感染を2酵素阻害で抑える、京大がiPSで確認
京都大学iPS細胞研究所の橋本里菜特定研究員と高山和雄講師らは、新型コロナウイルスへの感染を2種類の酵素の阻害で抑制できることを発見した。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた実験で、2種類の酵素阻害剤の投与によりウイルス量を0・0078%まで減らせた。今後、分化後の細胞での効果と毒性検証や関連因子の特定により実用化できるかを検討する。
iPS細胞に新型コロナウイルスと結合するたんぱく質「ACE2」を多く発現させて遺伝子制御を行った。ウイルス表面のスパイクたんぱく質切断で細胞への侵入を促す「TMPRSS2」や、たんぱく質分解を促す「カテプシンB」などの発現抑制でウイルスの転写減少を確認した。
次に薬剤を探した。TMPRSS2阻害剤のうち、すい炎やがんの治療薬で新型コロナ治療薬としても期待される「カモスタット」とカテプシンB阻害剤の研究用試薬「CA―074Me」で、毒性が少なくウイルス量を減らせた。
さらに酵素の同時抑制で効果が高まるかを調べた。TMPRSS2とカテプシンBの発現を単独抑制することで、ウイルス量はそれぞれ20・6%と0・84%まで低下した。この2種類を同時に発現抑制すると0・036%、阻害剤2種類の同時投与で0・0078%まで抑制できた。
ヒト体内の分子が標的のため、ウイルス変異後も有効性を維持しやすい。
ただ、分化後の細胞やヒトへの投与による効果や安全性が不明のため、検証を進めていく。
日刊工業新聞2021年10月22日