ハンディを創意工夫で解消。東京・世田谷区が挑む「脱炭素」達成への道筋

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津南町と再生エネ電気で連携する協定を締結した保坂展人世田谷区長(右)と桑原悠津南町長(画面)

東京都世田谷区は新潟県や青森県などの自治体と連携し、地方から区内への再生可能エネルギー供給を拡大している。他にも省エネルギー活動が地域経済にも貢献するポイント制度や、再生エネ普及に賛同する企業を募る「せたがや版RE100」も始めた。都市部に位置してエネルギー消費が多いハンディを抱えながらも創意工夫によって、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素」達成を目指す。

世田谷区は8月19日、新潟県津南町と「自然エネルギー活用を通じた連携・協力協定」を結んだ。津南町の町営小水力発電所から年23万キロワット時の電気を区に供給してもらう。準備が整い次第、“津南産再生エネ”を購入したい企業を募る。

これで区が再生エネで連携する自治体は5団体となった。群馬県川場村からは木質バイオマス、青森県弘前市からは太陽光、長野県からは水力発電の電気を区内の一般家庭の住居や保育園などに送ってもらっている。新潟県十日町市の温泉を使った地熱発電の電気も利用に向けて準備中だ。

住宅街を抱える区内は再生エネ設備を設置できる土地が少なく、他地域からの供給はありがたい。協定を締結した自治体も地域資源である再生エネを活用し、地域外から売電収入を得られる。

区エネルギー施策推進課の池田あゆみ課長は「交流にもなる」と効果を語る。電気の利用を通じて区民や企業も“電気の産地”に関心を持ち続けられる。産地を訪問するツアーが実施され、自治体には観光や特産品を購入してもらう機会となっている。

区は9月7日、再生エネを通じた交流についてのオンライン意見交換会を開催したところ、113自治体が参加した。関心の高さがうかがえ、都市と地方が再生エネで結びつき、人や物が行き来する新しい経済モデルができそうだ。

区は19年秋に襲来した台風被害を契機に気候変動対策を強化している。20年10月、気候非常事態を宣言し、50年までに脱炭素を目指すと表明した。区の二酸化炭素(CO2)排出量の半分は家庭から出ており、「区民92万人の行動が重要」(池田課長)となる。そこで区民や企業が省エネを実践した成果に応じてポイントを獲得できる事業を展開。ポイントは商品券と交換できるので地元経済にも貢献する。この商品券の原資は、区が神奈川県三浦市に設置した太陽光発電所の売電収益の年500万円だ。

11月から三浦市の太陽光発電所の売電先を東急パワーサプライ(世田谷区)に変更する。同社は公共施設などに供給し、区民に再生エネをPRして啓発に協力する。また、再生エネ普及に賛同した企業と個人を区のホームページに掲載する、せたがや版RE100も始めた。企業も脱炭素への姿勢や地域貢献をPRできる。

政府は6月、「地域脱炭素ロードマップ」を策定し、先行100地域を選んで政策支援することを決めた。政府は地域の実情に合った創意工夫を求めており、世田谷区のように他の自治体との連携や産業振興につながる取り組みが各地で増えそうだ。

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日刊工業新聞2021年10月8日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

米や野菜にように、地方から都市へ水力や地熱発電などの電気を売る時代になりました。都市部はエネルギー消費が多く、地元の電気を賄えるだけの再生エネ設備を設置できません。逆に地域では再生エネで作った電気が余ることもあります。今後、他にも新しい脱炭素への取り組みが出てくると思います。

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世田谷区

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