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電気制御不要!低予算で効果的な「からくり設計」を学ぼう(その2)

雑誌『機械設計』8月号特集 目的別に学ぶ からくりのメカニズム設計入門 第1章 リンクの連結
「機械設計」8月特別増大号では「目的別に学ぶ からくりのメカニズム設計入門」を特集。複雑な電気制御をしなくても、基本的な機械要素部品を工夫して組み合わせることで、低予算で効果的な動きを実現する「からくり設計」について、事例やイラストを多用してやさしく解説する。

解説1-2 リンク接続が難しいときの接続方法


(1)回転運動に変換する
 リンク機構で運動を連結する方法として、連結する側とされる側が同じ面に沿って動く場合には、リンク棒やコンロッド、スラッドなどを使って運動を伝達できます。ところが、図1―2―1のように、垂直面に円運動する入力レバーと、水平面で円運動する出力レバーを連結するときには、リンクやコンロッドでは連結できず、スラッドを使ってもうまくいきません。
 このようなときには、歯車を使った連結を考えます。図1―2―2のように、かさ歯車を使って入力の回転を垂直から水平に変換すると、出力レバーと連結できるようになります。
図1-2-1  垂直円と水平円の連結
図1-2-2  歯車を使った連結
(2)直線運動に変換する
 図1―2―3はクランクで駆動レバーを往復運動しています。その駆動レバーの出力で、水平に揺動運動する出力レバーを動かそうとしています。ところが、このままでは駆動レバーが垂直面に沿って円弧運動をするので、水平面に沿って動く出力レバーとうまく連結できません。
 このようなときには、図1―2―4のように直動ガイドを使って、垂直面の運動を直動に変換して連結すると、うまく力を伝達できるようになります。直動にガイドされたブロックと出力レバーを連結するには、リンク棒やコンロッド、スラッドなどを使うことができます。この例ではスラッドを使って連結しています。
図1-2-3  リンク接続が難しい例
図1-2-4 直動ガイドを使った連結
(3)距離を離してボールジョイント型コンロッドで連結する
 図1―2―5は、クレビスシリンダで円弧を描いて往復運動をする入力レバーを出力レバーに連結しようとしているものです。グルーブとピンを使って連結しようとしていますが、うまくいきません。
 このような場合には、連結する距離を離して、ボールジョイント型のコンロッドで連結する方法があります。図1―2―6のコンロッドは、ジョイント部が球面軸受になっているので、ある程度、上下左右方向に接続部の姿勢を変えることができます。
 このコンロッドの片側のジョイント部を90°角度を変えて入力レバーと出力レバーを連結したものが図1―2―7の連結方法です。この場合、コンロッドがねじれた形で連結することになるので、長いコンロッドを使って入力レバーと出力レバーの連結部の距離を離しておく必要があります。
 長いコンロッドを使った連結は、駆動部と従動部の運動方向の誤差を吸収するので比較的使いやすい方法ですが、コンロッドを長くするために装置の連結部にスペース的な余裕がないと使えません。
 連結方法は1つだけではありません。いろいろな連結方法を覚えておき、自由に使いこなせるようにしておきましょう。
図1-2-5 入力レバーの運動を出力レバーに連結する
図1-2-6 ボールジョイント型コンロッド
図1-2-7 距離を離してボールジョイント型コンロッドを使った連結

 

著者略歴


新興技術研究所 専務取締役 熊谷英樹(くまがい・ひでき)
略歴
1981年 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業。
1983年 慶應義塾大学大学院電気工学専攻修了。住友商事株式会社入社。
1988年 株式会社新興技術研究所入社。
現在、株式会社新興技術研究所専務取締役、日本教育企画株式会社代表取締役。山梨県産業技術短期大学校非常勤講師、自動化推進協会理事、高齢・障害・求職者雇用支援機構非常勤講師。
著書
「必携『からくり設計』メカニズム定石集-ゼロから始める簡易自動化」
「ゼロからはじめるシーケンス制御」
「必携 シーケンス制御プログラム定石集」
「絵とき PLC制御基礎のきそ」
ほか多数

雑誌紹介


雑誌名:機械設計2021年8月号
判型:B5判
税込み価格:2,035円

内容紹介

機械設計 2021年8月号  Vol.65 No.9

特集「目的別に学ぶ からくりのメカニズム設計入門」  全10章構成で、全章を新興技術研究所(東京都世田谷区)の熊谷英樹専務が執筆した。第1章から第8章は、からくりの基本である「運動の伝達」「運動特性」「ガイド」に着目。まずリンクの連結の仕組みや、うまく連結できないときの対処方法を説明する。次に運動特性のつくり方のうち、回転と直動を複合した動作や、移動端で一時停止する往復運動などをつくるためのからくりを紹介する。また、プレスリムーバやメカニカルチャックの設計例を使って、ツールのガイド方法を解説する。第9章では、制御装置を使わずにからくりを制御する方法、第10章ではからくりを使って生産性を上げる手法を解説する。

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