「出張授業」で起業マインド向上。「高校生ビジネスプラン・グランプリ」が生んだ成果
日本公庫、出張授業で支援
日本政策金融公庫が主催し、高校生がビジネスプランを競う全国規模の大会「高校生ビジネスプラン・グランプリ」の参加校が増えている。日本公庫の創業支援担当が希望校にビジネスプランの作成に必要な知識を提供する「出張授業」など、高校生の起業マインドを高める独自の取り組みが定着。2019年度大会には過去最高の409校が参加した。近年は大会参加者が起業する事例が相次ぐなど、次代を担う人材輩出につながっている。(下氏香菜子)
高校生ビジネスプラン・グランプリは高校生にビジネスプランの作成を通じ、自ら考え行動する力や、課題解決力といった実社会で求められる力を養ってもらうことを目的に13年度に創設した。
新型コロナウイルス感染症の影響で20年度大会が中止になったため、9回目となる21年度大会は2年ぶりの開催。9月22日(ウェブ応募は9月29日)までプランを募集し、22年1月に最終審査会を開き受賞者を決める。
同大会の最大の特徴は参加校の生徒に対する起業教育支援の手厚さだ。日本公庫で実際に創業支援に携わる職員が希望校の生徒に対しビジネスプラン作成を支援する「出張授業」が代表例で、無料で実施している。
生徒は創業支援のプロからアイデアの発想法、収支計画の立て方などについて直に学べる貴重な経験ができる。
全ての応募プランに対し、日本公庫の職員が講評コメントをつけて参加校と生徒にフィードバックする取り組みも行っている。
参加校と生徒はビジネスプランの作成経験にとどまらず、プランの評価点や改善点を把握し、起業への理解を深められるメリットがある。
実際、過去の大会参加者が起業する事例も増えている。15年度大会に参加したタイミー(東京都豊島区)の小川嶺社長は最終審査会に進むファイナリストに選出されなかった経験をきっかけに起業を目指し、17年に企業と人材を仲介するアプリを開発する同社を立ち上げた。設立時には日本公庫が融資した。
このほか、ベトナムの保育施設向けITサービス事業などを展開するWELY(東京都渋谷区)の松岡奈々社長や映像制作を手がける北映Northern Films(北海道北見市)の磯川実社長らが大会参加後に起業し、活躍している。
日本は欧米と比較し開業率が低い課題を抱える。日本公庫の担当者は高校生の大会参加を通じ「起業への理解を深めてもらい、日本で起業しやすい環境整備にもつなげたい」と力を込める。
日本公庫は大会に参加した経験のあるOB・OGの交流会を定期的に開催している。特に高校卒業後のOB・OGとのコミュニケーションを継続・強化し、今後の大会の発展に役立てていきたい考えだ。