引き抜き防いで優秀な人材を確保。大和証券グループの人事制度改革
大和証券グループ本社は4月、高度なデジタル技術を扱う人材や専門性の高い金融・数理知識を持つ人材を対象にした「エキスパート・コース」を新設した。総合職の中に、特定の仕事や役割などに対して人材を割り当てるジョブ型を組み合わせた新しい人事制度を設置。外資系金融機関など他社からの引き抜きもある中、社員の能力やスキルに見合う報酬体系にすることで優秀な人材の確保につなげる。
等級や年齢に関係なく、職務や役割、実績に応じた報酬体系で市場での評価も加味して年収水準を設定する。既存社員ではデリバティブ(金融派生商品)部門を中心に約10人の対象者がおり、認定を受けて7月から新しい処遇が適用される。データサイエンティストやエンジニアなどのIT人材は22年6月に初回認定する計画だ。また、新卒採用では2022年度からエキスパート・コースを導入し、若干名を募集する。新卒の初任給は月額40万円から(固定残業代30時間分を含む)。
新人事制度の導入経緯について、最高健康責任者(CHO)兼人事担当の白川香名常務執行役は「専門性の高い優秀な人材を誰がどのように処遇していくか、特別な処遇を含めた改革が必要だという問題意識を抱えていた」と明かす。総合職の中に新設したことも特徴で、福利厚生を受けられるほか希望すれば通常の総合職に戻ることもできる。
エキスパート・コースのうち金融工学などのハイレベルな金融知識を持つ人材は、高度な数学的手法を使い金融商品を考案するクオンツやデリバティブのモデル策定などを担う。博士課程卒業者やクオンツ人材は希少性が高いため、社内での育成・定着が不可欠だ。「これまでは博士課程卒業者に直接アプローチできていなかったが、今は大学研究室を通じて会社をアピールしている」(白川常務執行役)といい、対象者への認知度向上や獲得を強化している。中長期的な視点から人事制度の改革に注力している。