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SMBC日興×ドコモ、SBI×CCC、野村×LINE...投資初心者の争奪戦で勝つのはどこだ?
証券業界で投資初心者の争奪戦が激しくなっている。通信会社やカード会社などの異業種が投資サービスに相次いで参入し、証券会社との提携も目立ってきた。顧客が富裕層に偏るビジネスモデルでは成長力が弱く、若年層など新たな顧客層の取り込みは急務。新型コロナウイルスの感染拡大で株式市場も変動しているが、外出自粛などで自宅から気軽に投資に触れる契機にもなっている。各社には投資の心理的ハードルを下げる戦略が求められる。(孝志勇輔)
異業種と連携 巨大顧客基盤に照準
証券業界は投資初心者の取り込みに腐心してきたが、巨大な顧客基盤や経済圏を持つ異業種の参入で競争環境が大きく変わろうとしている。会員数が7300万人以上の共通ポイント「dポイント」を運営するNTTドコモとSMBC日興証券は3月に提携し、dポイントを使って株が購入できるサービスを提供している。提携後7営業日の口座開設数が、最近2カ月で集計・換算した7営業日の開設数と比べて10倍以上という。
SMBC日興証券は投資関連の情報配信サービスを以前から展開しており、記事に掲載される企業の株を100円から買える。そのためdポイントも同様に、100ポイントから投資に使えるようにする。しかも100万円までの取引なら手数料がかからない。dポイント利用者を投資に呼び込む仕掛けが整った。
使い勝手の良いポイントを投資に振り向けてもらう動きは活発化している。SBI証券とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のグループ会社が設立したSBIネオモバイル証券(東京都港区)は、共通ポイント「Tポイント」で株を取引するサービスを拡大している。「口座数が50万件を超えてくれば、十分に収益が上がる」(北尾吉孝SBIホールディングス社長)という。消費行動に精通するCCCとの関係を生かして、買い物などでためたTポイントを投資に回してもらうことを狙う。
楽天証券は楽天グループの経済圏をテコに、「楽天スーパーポイント」を利用した株取引サービス、「楽天カード」のクレジット決済による投資信託の積み立てサービスを提供している。楠雄治社長は「証券関連のサービスでポイント連携が進んでおり、顧客の利便性を高める」と自信をのぞかせる。楽天が国内に抱える1億以上の会員基盤を活用しながら、資産形成の需要を取り込む。
若年層ターゲット 動線にLINE活用
若年層との幅広い接点が強みの異業種も商機を虎視眈々(たんたん)と狙っている。クレディセゾンはスマートフォン向けに証券サービスを提供している。自社のクレジットカード「セゾンカード」などでの決済により株や上場投資信託(ETF)を購入可能。カードの登録情報の活用で、初心者にとってネックになりがちな口座開設の手間を減らした。
セゾンが同サービスを投入できたのは、協業するスマートプラス(東京都千代田区)の存在が大きい。証券サービスの事業基盤の構築を同社が手がけており、証券会社を独自に設立してインフラ面を整えるのに比べて初期投資を大幅に減らせる。「証券のプラットフォーム(基盤)として異業種の参入障壁をなくせる」(藤江典雄スマートプラス代表取締役)という。
また丸井グループ子会社のtsumiki証券(東京都中野区)は、つみたてNISA(少額投資非課税制度)対象の投資信託の顧客をじわりと拡大している。買い物や携帯電話料金の支払いなど幅広く利用されている丸井のクレジットカード「エポスカード」で、投信を購入できるようにしている。もともと20―30代の女性を中心に同カードが浸透しており、投信の潜在顧客を抱えているといえる。若年層との接点を持とうと試行錯誤している大手証券会社とは対照的な立場だ。
カード会社や小売業にとっては本業で安定的に稼ぎながら、証券分野での相乗効果を狙う戦略を描きやすい。証券会社よりも、普段の生活で投資を身近に意識してもらう役割を果たすことになりそうだ。
幅広い年齢層が利用する対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE(ライン)」を展開するLINEと、野村ホールディングス(HD)が出資するLINE証券(東京都品川区)も攻勢をかけている。働き盛りの世代が利用しやすいように、平日21時まで株やETFをリアルタイムに取引できるようにしている。
3月には外国為替証拠金取引(FX)サービスも始めた。為替動向に影響を与える材料や為替の値動きなどを確認しやすくした。ラインの利用から投資への動線が浮沈のカギを握っている。
大手も対抗策 新サービスを投入へ
初心者の開拓をめぐって異業種の存在感が増す中で大手証券2社も対抗策を迫られている。野村はLINE証券に加え、金融のイノベーションを目指す専任組織を設けて新サービスを仕込んできた。
池田肇執行役員は「顧客目線でデジタル技術を活用する。既存の金融サービスの改善も必要だ」と説明。富裕層に強力な営業体制を敷いて証券業界をリードしてきたが、勢力図の変化に危機感を強めている。国内証券の最大手でありながら、初心者の争奪戦では挑戦者の立場を自認する。
大和証券グループ本社は初心者向け投資サービス事業の準備を進める。資本業務提携するセゾンとの関係を生かした戦略を打ち出しそうだ。野村、大和ともに伝統的な証券会社だけに若年層が親近感を持ち投資に踏み出しやすいサービスやブランド戦略が求められる。
証券各社にとっては異業種がライバルでありながら、タッグを組む相手にもなり得る。顧客基盤を抱える企業や、フィンテック(金融とITの融合)が武器の企業と連携すれば、初心者を取り込みやすくなるためだ。若年層にとって老後に向けた資産形成は避けては通れず、証券各社や異業種からの参入組には投資意欲を喚起するサービスや工夫が必要で混戦模様が続きそうだ。