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アンモニアや水素は石炭・LNGの代わりになるか?日本の脱炭素戦略のカギに

脱炭素化へ化石燃料転換
アンモニアや水素は石炭・LNGの代わりになるか?日本の脱炭素戦略のカギに

アンモニア混焼の実証を始めるJERAの碧南火力発電所

排出量の4割

化石燃料を使用した火力発電の二酸化炭素(CO2)排出量は合計で4・5億トン(2018年)と、国内の総CO2排出量の約4割を占める。日本が50年にカーボンニュートラルを実現するためには、火力発電の低炭素化、脱炭素化が欠かせない。そこで有望視されるのが、石炭や液化天然ガス(LNG)に代わり、アンモニアや水素を燃焼する方法。普及に向け水素、アンモニアの低コスト化、安定調達が求められる。

「化石燃料を使う発電所で、カーボンフリーの燃料に変えていく」。50年ゼロエミッション目標を策定したJERAの小野田聡社長は、達成のカギをこう語る。非効率石炭火力を休廃止する一方、既存の石炭火力でアンモニア、LNG火力で水素を混焼し、50年までに専焼化する計画だ。

まず20年代前半に碧南火力発電所(愛知県碧南市)で石炭とアンモニアで混焼の実証を始める。LNG火力での水素混焼は「30―40%は確認できているが、コストがまだ高い。30年よりも後に消費を増やす」(小野田社長)と先を見据える。

安定調達

アンモニアも水素も安定調達が課題だ。アンモニアは20%混焼で1基当たり年間50万トンが必要とされる。経済産業省の試算では国内の全石炭火力で実施した場合に年間2000万トンと、世界の貿易量に相当する。海外生産国との調達網を構築しなければならない。

水素はまだ最適なキャリアが確立されていない。液化はマイナス253度Cまで冷却する必要があり、気化させずに運ぶ難度が高い。有機ハイドライドやアンモニアに合成した輸送も検討され、JERAは「現状はアンモニアが一番安く、有効な手段」(同)とみる。

豪州南東部の端に位置する炭鉱地区ラトロブバレー。採炭場に程近い実証プラントで、褐炭をガス化して純度99・999%の水素の製造に成功した。川崎重工業、Jパワーなど6社が参画する水素サプライチェーン実証だ。21年中にも液化水素運搬船で日本に運び込む予定だ。褐炭ガス化、水素精製を担うJパワーの玉村琢之研究推進室総括マネージャーは「今後は複数の褐炭の性能を評価する」とし、商用化をにらむ。

水素やアンモニアの需要拡大を受け、製造に乗り出す企業も増えてきた。天然ガス油田の上流開発を手がける国際石油開発帝石は、「国内で水素の10%を扱う事業者になる」(上田隆之社長)と宣言した。天然ガスからCO2を回収・貯留した上で生成したブルー水素を手がける。

枠を超え連携

南長岡ガス田(新潟県長岡市)で生産した天然ガスを新潟県柏崎市の設備で水素に生成し、分離したCO2は他の減退ガス田の地中に圧入してガス増進回収(EGR)に活用する。この実証の成果を基にアラブ首長国連邦(UAE)アブダビなどで水素やアンモニアの製造を検討する。池田隆彦副社長は「ガス油田の開発で長年の蓄積がある強みを生かせる」とみる。

岩谷産業は再生可能エネルギーで電気分解して生成するグリーン水素で豪スタンウェルと連携した。伊藤忠エネクスは仏エア・リキードと協業し、水素製造に乗り出す構えだ。JERAの小野田社長は「産業界を含めて仲間を増やし、みなで使えば消費量も増え、コストも下がる。技術協力しながら進めるのが大事だ」とし、業種や国の枠を超えて連携する重要性を説く。

日刊工業新聞2021年3月16日

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