タコが脱落しカニ頼みになった冷凍卸、粉飾まみれの転落倒産
ラハイナは1995年11月に設立された冷凍水産物卸売業者。取り扱いの中心だったのがカニだ。2012年にはタコの取り扱いにたける社員(後に取締役)を迎え入れ、カニに次ぐ第2の柱として販路開拓に注力。年売上高は14年3月期に30億円を突破、18年3月期には46億9700万円を計上するまでに成長した。
同社は7月20日に大阪地裁より破産手続き開始決定を受けた。前社長である梶原善高氏が急逝したことで、積み上げられてきた数々の不正経理が発覚するなど過去のずさんな経営体制が露見。とても営業を継続できる経営状態ではないことが明らかになったためだ。
倒産を振り返る上で、まず注目したいのは17年に売掛債権2億円の焦げ付きが発生した点だ。同社の売上高総利益率は4%にも満たなかったので、2億円の焦げ付きに伴う損失を取り戻すためには焦げ付き金額(2億円)÷売上高総利益率(4%)=50億円の売上高を増やす必要があるほど、衝撃的な焦げ付きだった。
また、同時期には海外における漁獲量減少や需要増加を受けてタコの相場が急騰。薄利多売のなか、販売量の減少と利益率の低下が見込まれたことから、18年内にはタコの取り扱いを停止せざるを得なくなった。
減収減益の決算書を金融機関に提出すれば、運転資金調達に制約が生じる可能性がある。前社長はタコの売り上げ減少をカニの売り上げ増加で補っているように見せかける架空取引に手を染めることで難局を乗り切ろうとした。さらに「決算書記載の買掛金を少なく見せる粉飾を行い、融資を得て、事業を継続」(申立書より抜粋)していた。
カニの相場も上昇傾向で推移して必要運転資金が増加するなか、不正の事実が発覚する恐れの大きい金融債務のリスケジュール要請を回避しながら、虚偽の決算書などを提出して15を超える金融機関から資金を調達し、延命を図っていたのが真実の姿だった。
(文=帝国データバンク情報部)