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小田原かまぼこ・御三家の一角、コロナ禍倒産を引き寄せた不祥事

小田原かまぼこ・御三家の一角、コロナ禍倒産を引き寄せた不祥事

写真はイメージ

「鈴廣」「籠清」と並ぶ小田原かまぼこ・御三家の一角、「丸う田代」が10月2日までに自己破産申請の準備に入った。創業は明治初期までさかのぼり、今も残る「小田原かまぼこ通り」に面した土地で、かまぼこ製造を始めた。やがて同社の製品は地元を代表する名産品として、その名が県外にも知られるようになり需要が拡大。ピーク時の1992年3月期には、年売上高約25億6300万円を計上するまでに成長した。

しかし2000年代以降は観光土産としての販売が鈍化するなか、02年に内部で不祥事が発覚。経理担当役員のH氏(後に解任)が8億円超の会社資金を20年にわたって横領していた。それ以降も過去の不動産取得に伴う多額の借入金を抱え、各種リストラや横領事件関連の費用負担も重なり、13年3月期には債務超過に転落した。20年3月期の年売上高は約14億5200万円にとどまり、5期連続欠損で資金繰りにも窮するようになっていた。

破綻の瀬戸際に追い込まれていたさなか、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大。本店を含む直営店の販売が“蒸発”したうえ、地元箱根地区のホテル・旅館、百貨店、土産店向けの販売も激減した。この間、事業譲渡に向けたスポンサー企業を水面下で探し求めたものの奏功せず、事業継続断念に追い込まれた。

かまぼこの町・小田原で老舗業者が倒産するのは、今回が初めてではない。かまぼこメーカーとしては後発ながら業歴400年を超える「美濃屋吉兵衛商店」が、19年6月に破産したばかりだった。両社の破綻原因に共通するのは、(1)業容拡大に伴う多額の借入金(2)内部管理体制におけるガバナンスの甘さ(3)地元の観光需要に左右されるビジネスモデルなどだ。長年の業績悪化から抜け出せないまま、1年間で最大の書き入れ時である年末商戦を前にして、150年超の歴史を誇る老舗業者がまたひとつ姿を消した。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年11月3日

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