「こんな素材を待っていた」...“脱プラ”新ブランドを立ち上げた粘着製品メーカー
粘着関連製品の総合メーカー、リンテックは、環境にやさしい製品の開発を推進している。原料にプラスチックや有機溶剤などを使わざるを得ない事情もあるが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿って環境負荷を低減するのは時代の要請だ。顧客の求める性能に応えながら、ラベル素材「PLALESS(プラレス)」など環境配慮型製品の展開を強化する。
2019年に大阪で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で海洋プラスチックゴミ問題が取り上げられ、中国がプラスチックゴミ受け入れを中止するなど“脱プラスチック”の流れが加速。こうした流れが同社による紙原料主体のプラレスの開発につながった。
プラレスは脱プラニーズに応えたラベル素材のブランド。クリーニングタグなど洗濯しても強度を保ち色落ちしない耐洗紙の技術などを応用して7月に発売した。海谷健司取締役常務執行役員事業統括本部長は「洋紙部門にとって新たな用途に広げたいという長年の思いがかなった」と感慨深げだ。
「こんな素材を待っていた」との反響がある一方、課題もある。プラスチック素材に近いが、紙素材のため基材が湿度の影響を多少受ける。同社はラベルすべてを紙素材に転換するのではなく「環境配慮を求めるニーズへの選択肢としてプラレスを提供する」(海谷取締役)としてラインアップを拡充する。
同社で「SDGsという言葉を社内で使い始めたのは17年頃」(同)という。CSR推進室にSDGs委員会を18年2月に設置。服部真社長(当時は取締役常務執行役員事業統括本部長)が推進担当役員を務めた。委員会の初期メンバーは関東中心の開発部門の管理職や若手社員。定期的に集まり「SDGsとは何か」を知るため講師を招き、グループディスカッションで議論を深めた。
顧客の要求性能に応えるには機能操作しやすい有機溶剤が必要。海谷取締役は「溶剤をなくして紙に替えればよいという単純な話ではない」と指摘する。培った技術を駆使し要求性能と環境性の両立を目指す。