産学共同でSDGsに取り組む、慶応義塾大学が注目したのは地域の“いいとこ探し”
ラボを主宰
国連の持続可能な開発目標「SDGs」の活動で、慶応義塾大学のリーダーとして知られる大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授―。湘南藤沢キャンパス(SFC)のSFC研究所の一つ「xSDG・ラボ」を主宰する。また企業や自治体が集まる「xSDGコンソーシアム」では優良事例を創出する産学共同研究や、企業評価および認証の分科会を動かす。xはSDGsと掛け合わす多様なものが当てはまり、蟹江研究室の学生らの教育と重ねて活動している。
自治体との連携では兵庫県豊岡市内の限界集落で、持続可能な発展を検討する取り組みが好事例だ。学生のフィールドワークとして出向き、親世代・子世代に聞き取り調査をし、ターゲットとアクションを定めるワークショップを行った。
その結果、現在の人口約700人は何もしなければ100人になるが、子どもたちが定住すれば約1000人の適正規模が可能と導いた。それには、SDGsを軸にどのように行動すべきか―。学生らは地元中学生と、SDGsの観点で地域の“いいとこ探し”をし、地元企業の聞き取り調査を行うなどアクションを起こした。
「SDGsは目標が決まっているがやり方は自由。おもしろそうという気持ちで取り組める教育ツールだ。カラフルなアイコンもコミュニケーションに役立つ」と蟹江教授は振り返る。地域とは逆に、国連の会議にも学生を連れて行き、別の刺激も与えている。
商品を分析
企業との共同研究では、良品計画の「無印良品」の各商品をSDGsの観点から分析した。例えばオーガニックコットンTシャツは健康や環境への配慮がなされているが、エネルギー消費や水資源に対する意識は不十分だった。食材も国産やオーガニックで好ましいが、廃棄の食材ロスの視点が弱いという。
またコンソーシアムでは17の目標と169のターゲットを「日本企業は何をすべきか」という形で“翻訳”して公表した。例えば「食料生産の所得倍増」なら、小規模生産者からの調達やフェアトレード商品の購入が具体的な行動になる。「地方創生のSDGsで、自治体が企業活動を認定する時にも活用してもらっている」(蟹江教授)という。
本質に目向ける
現在の課題はウィズコロナ時代の道しるべとしてのSDGsだ。例えば食料生産のサプライチェーン(供給網)が新型コロナで途切れ、地産地消が重要な目標になってきた。より本質に目を向ける活動が進むことになりそうだ。