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どうなる日本メーカーのディーゼル車戦略

本当にクリーンなの?という疑いを払拭できるか
どうなる日本メーカーのディーゼル車戦略

NOX後処理装置なしで欧州と日本の排ガス規制に対応させたマツダの「CX―5」とデンソーのコモンレールシステム


外部調達か自社開発か


 ただ各社とも主力とする地域や商品群は千差万別。ディーゼル車そのものの信頼性や検査のあり方が揺らぐ中で、各国ディーゼル市場や規制当局の動向が各社の戦略に影響しそうだ。

 ハイブリッド車(HV)に注力してきたトヨタ自動車はディーゼルエンジンが弱みとされてきたが、今年おもに新興国向けの戦略車「IMV」に搭載する新型ディーゼルエンジンを発表。冷却損失を低減する新たな燃焼技術を取り入れ、極寒地や高地だけでなく欧州の規制「ユーロ6」に対応した。「世界中のどんなシーンでも安心して乗ってもらえるよう開発してきた。この姿勢はこれからも変わらない」と濱村芳彦ユニットセンターエンジン開発推進部主査は話す。

 一方でディーゼル車が市場の半分を占める欧州では、独BMWからディーゼルエンジンの供給を受けてディーゼル車の品ぞろえを広げている。日産自動車は提携を駆使する。新興国向けピックアップトラックのエンジンは自社生産しているが、欧州では日産ブランドは仏ルノー、高級車ブランドは独ダイムラーからディーゼルエンジンの供給を受ける。欧州ではディーゼルエンジンを外部調達するという割り切った方針が奏功し、欧州市場でシェアが増加。日系トップのトヨタに肉薄する。

マツダ、技術を牽引


 ディーゼルを強みとする欧米メーカーの肩を借りるのはスズキも同様。欧州に次ぐディーゼル市場規模でありスズキの主力市場でもあるインド。スズキは欧米フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)からライセンスを受けて自社生産したり、フィアットが生産したりしたディーゼルエンジンを採用している。一方で今年から初の自社開発となる小排気量のディーゼルエンジンをインドで販売する乗用車に搭載。搭載車種を拡大してインド首位の座を堅持する構えだ。
 
 自社開発と言えばマツダ。独自に構築した新世代技術群「スカイアクティブ」のディーゼル技術は「欧州メーカーにもけを取らない」(競合幹部)との高評価で、急拡大する日本のディーゼル市場を牽引(けんいん)する。人見光夫常務執行役員は、同社が不正をしていないことを強調した上で、「マツダらしい走りと環境性能の両立を目指し、米国へのディーゼル車投入に向け開発を進めている」と話す。日欧より排ガス規制が厳しい米国ディーゼル市場に挑む考えだ。

 各社は自社の開発資源や競合との提携を巧みに活用し、ディーゼル戦略を描く。だが日米欧などの規制当局は不正問題を受け排ガス検査を厳しくする方針を示しており、メーカーのコスト負担がかさむ懸念がある。さらに、ディーゼル不信が市場に広がれば、環境技術を巡る提携関係に影響が出て、戦略の見直しを迫られる可能性もある。

2015年10月2日/5日/6日の記事を再編集
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
 ディーゼルエンジンは、欧州では普及しすぎた、みたいな記事をネットのどこかの記事で見ました。VWの件は、それに対する揺り戻しとして働くでしょう。ハイブリッド車など、もう少し受け入れてくれてもいいのになと思います。  しかし一方で、日本や米国ではディーゼルの普及がほとんど進んでいないのは事実で、原油を熱分解すればどうしても出てきてしまう軽油を有効利用するためにも、クリーンな(←これが重要)ディーゼルエンジンはもう少し使われてしかるべきだと思います。  ディーゼルって本当にクリーンなの?という疑いの目がVW以外のメーカーにも向けられている状況で、この危機を乗り越えることが出来るかどうか、ディーゼルエンジンにかける各社の正念場と言えるでしょう。

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