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賃上げ企業82%も、新卒者の初任給では大手と中小に差

賃上げできない企業は中長期の業績に影響も懸念
 東京商工リサーチがまとめた2018年度「賃上げに関するアンケート」によると、4月に賃上げを実施した企業は全体の82・2%を占めた。賃上げした理由として「従業員を定着させるため」と答えた割合が、資本金1億円以上の大企業で56・8%、同1億円未満の中小企業で68・7%。中小企業ほど人材流出を防ぐため、賃上げに取り組んでいる実態が浮き彫りとなった。

 賃上げの内訳は「定期昇給」が全体の78・7%でトップ。以下、「ベースアップ」の43・8%、「賞与増額」の37・4%が続いた。構成比では、大企業82・8%、中小企業78・0%の「定期昇給」と大企業44・1%、中小企業43・7%の「ベースアップ」は大企業と中小企業に大きな差はなかった。

 だが、「新卒者の初任給の増額」は大企業25・8%、中小企業15・2%で、10・6ポイントの大差が出た。内部保留に余裕のある大企業は、もともと賃金が高いうえ、人材確保のため初任給の賃上げに積極的に取り組んでくることがうかがえる。

 また、景気の先行き不透明感を背景に賃上げを実施しなかった企業は全体の17・8%。賃上げ未実施企業の割合は中小企業が大企業を2・8ポイント上回っている。

 東京商工リサーチでは、賃上げできない企業は求人難に加え、退職が加速する可能性があり、中長期的には業績への影響も危惧されると分析する。

日刊工業新聞2018年7月13日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
賃上げしていないのは少数派。これを数字で確認すると、賃上げできるかできないかが人材戦略に大きな差を生みそうだと感じました。

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