ユニー・ファミマ、“小売り第三極”へなりふり構わず
総合スーパー再生難しくドンキと連携、コンビニも差別化に走る
イオン、セブン&アイ・ホールディングスに次ぐ小売りの「第三極」を形成するユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)。3月に筆頭株主の伊藤忠商事から就任した髙柳浩二社長のもとで、かつての“ユニーグループ・ホールディングス(GHD)色”を薄めながら、金融分野など育成すべき新たな事業の柱を設定。存在感の発揮に努める。
総合スーパーマーケット(GMS)を運営するユニー(愛知県稲沢市)の関東事務所(横浜市神奈川区)からほど近いピアゴ大口店。同店はテナント部分を除いて2018年1月3日に閉店し、2月下旬にドンキホーテホールディングス(HD)の運営するディスカウント(DS)店舗「ドン・キホーテ」とのダブルネーム店として再開業する。
閉店セール中の店内は、地下の食料品売り場こそ混んでいたものの、1、2階の日用品や衣料品の売り場は閑散としていた。
「GMSの再生は難しい。グループ内のウエートを下げたい」。ドンキHDと8月に資本業務提携を発表した際、髙柳社長はこう断言した。
11月にはユニー株の4割をドンキHDに売却。ピアゴ大口店を皮切りにまず6店舗がユニーとドン・キホーテとのダブルネーム店となる。17年6月期まで28期連続の増収・営業増益と快進撃を続けるドンキHDのDS運営ノウハウを取り込み、再起を目指す。
GMS事業については小売り業界2強のイオンやセブン&アイHDも苦戦している。イオンの岡田元也社長は12日、「ひとつ屋根の下で何もかも扱うのはハンディがある」と話し、衣料品の専業会社を設けるなどの再構築せざるを得ない状況だ。
ユニーの11月末時点のGMS店舗数は2年前より32少ない198。10月には食品スーパーを展開していたピアゴ関東を、同業のハートフレンド(京都市下京区)に売却した。
ユニー・ファミマHDがグループ戦略の核に位置付けるコンビニ事業も、決して安心できる状態にはない。店舗数だけ見れば、ユニーGHDが運営していたサークルKサンクスがファミマと統合し、ファミマの国内での運営店舗数は11月末時点で1万7656。セブン―イレブンの約2万店に続く規模に拡大した。
業界ではセブン―イレブン・ジャパン、ファミマ、ローソンの3強が、店舗数ベースで業界の9割以上を占めている。だが、1店当たりの1日の売上高は、17年3―8月期はセブンの66万円に対しファミマは53万円と大きく水をあけられている。
毎月200程度の「サークルK」「サンクス」店舗がファミマに転換している点が響いているとはいえ、ファミマの既存店売上高は6月以降、前年同月実績を下回り続けている。
10月にはサークルK、サンクスの閉店の積み増しを発表。18年8月末までにブランド転換を終える。さらに弁当や総菜などの「中食」の競争力がセブンとの差だとの認識のもと、取引先向けの生産管理システムを統一し、設備投資も呼びかけている。
ファミリーマートの澤田貴司社長は「『ファミマは存在感が薄い』と言われる。トップダウンでやりきる」と話す。澤田社長は伊藤忠商事出身でファーストリテイリング副社長などの経験を持つ。
商品の知名度が高い骨なしチキン「ファミチキ」を擬人化した“ファミチキ先輩”を、販促物などで積極的に露出。コインランドリーやフィットネスジムを組み合わせた店舗の出店を予定するなど、競合との差別化に向けた策を練る。
ユニー・ファミマHDの髙柳浩二社長に金融事業への意欲や、ドンキホーテHDとの提携などについて聞いた。
―ユニー株の4割をドンキホーテHDに売却しました。調達資金の使途は。
「一つはポイントサービスや電子マネーなどを組み合わせた金融関連事業。今のファミマは自社が中心になるのではなく導入型。『胴元機能』を強化したい。電子マネーは絶対やる。単なる『ファミマで使えるカード』ではなく、皆が使いたくなるカードにしたい。ドンキホーテHDと共同展開するのも一つの方法。後1年ほどで結論を出さないと乗り遅れる」
「リアル店舗の場合は来ないと買ってもらえない。ドン・キホーテの強みは何といっても集客力。コンビニが集客で頭打ちなのは、利便性が向上していないから。フィットネスジムやコインランドリーを全ての店に導入するのは難しい。我々はフランチャイズ事業なので、全店に導入できるサービスを考えないといけない」
―ネット企業への対応策は。
「アマゾンと同じ土俵で闘う気はない。我々の強みは1万8000の店舗。『ラストワンマイル』への優位性は絶対的にある。新たなサービスを検討中だ」
―4月の決算会見では「伊藤忠(商事)を使い倒す」と話していました。ここまでに伊藤忠との関係に変化はありましたか。
「金融まわりに関しては力を借りている。商品の仕入れに関しては洗い直しをしている。グループ内の甘えがある。包材の金型に競合の1・5倍のコストを掛けていたりと、無駄があった。緊張感がないといけない」
(聞き手=江上佑美子)
総合スーパーマーケット(GMS)を運営するユニー(愛知県稲沢市)の関東事務所(横浜市神奈川区)からほど近いピアゴ大口店。同店はテナント部分を除いて2018年1月3日に閉店し、2月下旬にドンキホーテホールディングス(HD)の運営するディスカウント(DS)店舗「ドン・キホーテ」とのダブルネーム店として再開業する。
閉店セール中の店内は、地下の食料品売り場こそ混んでいたものの、1、2階の日用品や衣料品の売り場は閑散としていた。
「GMSの再生は難しい。グループ内のウエートを下げたい」。ドンキHDと8月に資本業務提携を発表した際、髙柳社長はこう断言した。
11月にはユニー株の4割をドンキHDに売却。ピアゴ大口店を皮切りにまず6店舗がユニーとドン・キホーテとのダブルネーム店となる。17年6月期まで28期連続の増収・営業増益と快進撃を続けるドンキHDのDS運営ノウハウを取り込み、再起を目指す。
GMS事業については小売り業界2強のイオンやセブン&アイHDも苦戦している。イオンの岡田元也社長は12日、「ひとつ屋根の下で何もかも扱うのはハンディがある」と話し、衣料品の専業会社を設けるなどの再構築せざるを得ない状況だ。
ユニーの11月末時点のGMS店舗数は2年前より32少ない198。10月には食品スーパーを展開していたピアゴ関東を、同業のハートフレンド(京都市下京区)に売却した。
ユニー・ファミマHDがグループ戦略の核に位置付けるコンビニ事業も、決して安心できる状態にはない。店舗数だけ見れば、ユニーGHDが運営していたサークルKサンクスがファミマと統合し、ファミマの国内での運営店舗数は11月末時点で1万7656。セブン―イレブンの約2万店に続く規模に拡大した。
業界ではセブン―イレブン・ジャパン、ファミマ、ローソンの3強が、店舗数ベースで業界の9割以上を占めている。だが、1店当たりの1日の売上高は、17年3―8月期はセブンの66万円に対しファミマは53万円と大きく水をあけられている。
毎月200程度の「サークルK」「サンクス」店舗がファミマに転換している点が響いているとはいえ、ファミマの既存店売上高は6月以降、前年同月実績を下回り続けている。
10月にはサークルK、サンクスの閉店の積み増しを発表。18年8月末までにブランド転換を終える。さらに弁当や総菜などの「中食」の競争力がセブンとの差だとの認識のもと、取引先向けの生産管理システムを統一し、設備投資も呼びかけている。
ファミリーマートの澤田貴司社長は「『ファミマは存在感が薄い』と言われる。トップダウンでやりきる」と話す。澤田社長は伊藤忠商事出身でファーストリテイリング副社長などの経験を持つ。
商品の知名度が高い骨なしチキン「ファミチキ」を擬人化した“ファミチキ先輩”を、販促物などで積極的に露出。コインランドリーやフィットネスジムを組み合わせた店舗の出店を予定するなど、競合との差別化に向けた策を練る。
ユニー・ファミマHD社長 髙柳浩二社長に聞く
ユニー・ファミマHDの髙柳浩二社長に金融事業への意欲や、ドンキホーテHDとの提携などについて聞いた。
―ユニー株の4割をドンキホーテHDに売却しました。調達資金の使途は。
「一つはポイントサービスや電子マネーなどを組み合わせた金融関連事業。今のファミマは自社が中心になるのではなく導入型。『胴元機能』を強化したい。電子マネーは絶対やる。単なる『ファミマで使えるカード』ではなく、皆が使いたくなるカードにしたい。ドンキホーテHDと共同展開するのも一つの方法。後1年ほどで結論を出さないと乗り遅れる」
「リアル店舗の場合は来ないと買ってもらえない。ドン・キホーテの強みは何といっても集客力。コンビニが集客で頭打ちなのは、利便性が向上していないから。フィットネスジムやコインランドリーを全ての店に導入するのは難しい。我々はフランチャイズ事業なので、全店に導入できるサービスを考えないといけない」
―ネット企業への対応策は。
「アマゾンと同じ土俵で闘う気はない。我々の強みは1万8000の店舗。『ラストワンマイル』への優位性は絶対的にある。新たなサービスを検討中だ」
―4月の決算会見では「伊藤忠(商事)を使い倒す」と話していました。ここまでに伊藤忠との関係に変化はありましたか。
「金融まわりに関しては力を借りている。商品の仕入れに関しては洗い直しをしている。グループ内の甘えがある。包材の金型に競合の1・5倍のコストを掛けていたりと、無駄があった。緊張感がないといけない」
(聞き手=江上佑美子)
日刊工業新聞2017年12月29日