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「ユニクロ」と「しまむら」 なぜ業績で明暗が分かれたのか

質と価格のバランスに変化。消費者が敏感に反応
「ユニクロ」と「しまむら」 なぜ業績で明暗が分かれたのか

ユニクロは値上げから一転値下げで集客を再強化する

 販売現場では、消費の価値志向が一段と強まりをみせている。単なる低価格商品に傾斜する節約志向ではなく、商品の質と価格を厳しく見極める価値志向を一段と強めている格好だ。

 国内のカジュアル衣料分野で覇を競う、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングとしまむら。2016年4月に発表した両社の決算は、対照的な結果となった。しまむら(16年2月期)は3期ぶりに営業増益となったがファストリ(15年9月―16年2月期)は大幅な減益となり、明暗を分けた。

 なぜ業績に差がついたのか。ある大手小売業の幹部は「ユニクロは何回かの値上げで、消費者が感じる商品の価値が低下したのではないか」と話す。

ユニクロ、値上げで圧倒的な価値薄らぐ


 ユニクロは海外生産比率が高いため為替の円安進行を背景に14年、15年と2年連続して計約15%の値上げを実施した。しかし、この結果、「『この質でこの価格ならば』という圧倒的な価値が薄らいだのではないか」(大手小売業幹部)というのだ。

 ユニクロは16年8月期第2四半期は前年同期比で客数減に見舞われており、値上げ価格が浸透するに連れ、客離れが起きたとも観測されている。このためユニクロでは現在、一部売れ筋商品などの値下げを実施、急ピッチに“価値の修復”に乗り出している。

 苦戦のユニクロに対し、しまむらの16年2月期は3期ぶりの増益となった。増益の要因は機能性衣料などのヒットだ。

 従来「ヒートテック」や「ウルトラライトダウン」など機能性衣料は、ユニクロのお株だった。だが、しまむらは15年の秋冬物で裏起毛のデニムパンツ「裏地あったかパンツ」が100万本を超すヒット商品になったり、生地ブランドの「ハリスツイード」とのコラボ商品が売れるなど、価値訴求が成功。いくつかのヒット商品がけん引役になる格好で来店客数が増え業績を伸ばした。

 すでにネットなどで情報がはん濫しており、消費者は情報を基に、質と価格を吟味できる。この質でこの価格ならばと価値を厳格に見極める。しまむらが増益、ユニクロが減益という業績は、消費者の価値志向に対応できたか否かの結果といえる。
(文=森谷信雄)
日刊工業新聞2016年5月4日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ユニクロの対応力の早さという見方もできる。「低価格」という消費者の価値は依然ある。この結果がどうでるか。価格うんぬんより、柳井さんの経営の価値観がどこまで通用するのかだろう。ポスト柳井のマネジメント体制にも直結する問題だが。

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