正常化は9月末。アスクル倉庫火災が突きつけたネット通販物流

メーカーも事態に備えよ

 アスクルは9日、埼玉県三芳町の物流倉庫「ASKUL Logi PARK 首都圏」(ALP首都圏)の火災事故について都内で記者会見を開き、個人向けネット通販「ロハコ」の配送遅延が当面続くことを明らかにした。代替倉庫を設けて配送の移管を進め、9月末の正常化を目指す。出火原因、業績への影響、社内処分は調査・検討中とした。アスクルの岩田彰一郎社長は「多大なご迷惑と心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます」として陳謝した。

 ALP首都圏はロハコの配送の62%を担っていた。現在は横浜と大阪の既存物流倉庫で代替配送しているが、カバーしきれないため9月までに3エリアに代替拠点を設ける。

 3月末までに埼玉県内に3カ所、東京都内に3カ所の物流倉庫を賃借。3つ目のエリアは未定だが、9月末までに賃借する。

 焼損した物流拠点の再構築について岩田社長は「まだ機関決定していないが、個人的にはいち早く安心できるセンターを作っていきたい」と述べた。業績への影響については、消防や警察による調査中のため、影響額を算出できないとした。
物流倉庫火災についておわびする岩田社長(中央)

物流網、集中か分散か


 アスクルの物流倉庫火災が、物流拠点の集約化を加速してきた物流業界に新たな課題を突きつけている。物流網に1カ所でもトラブルが起これば、企業の経営に大きな影響を与える事態が浮き彫りとなった。コストダウンの“集中”か、リスク回避のための“分散”か、ビジネスモデルの選択を迫られている。

 「まさかあんなに燃えるとは」。鎮火までに12日間を要したアスクルの物流倉庫「ASKUL Logi PARK 首都圏」(ALP首都圏、埼玉県三芳町)の火災は、物流関係者やメーカーに大きな衝撃を与えた。

 物流業界関係者は「物流戦略を見直す教訓となった」と話す。コーセーは「物流倉庫の(集中と分散の)バランスを見直した方がよい。国内に4カ所の大型物流拠点があるが、拠点増設に向けたコスト試算を始めた」(新本浩一執行役員)と対策に動く。

 アマゾンや楽天などは自社で製品を買い取らず、配送もメーカーなどに委託するマーケットプレイス型を強化している。一方、ALP首都圏は、アスクルが自社で保有する物流拠点。倉庫内にある在庫はアスクルが買い取った製品が9割を占める。

 火災事故後、横浜市の物流倉庫から配送を始めたが、全てをカバーしきれず取扱商品は半減。個人向けネット通販「ロハコ」の2月売上高の月間伸長率は1月より10・3ポイント下がった。

 「横浜に倉庫がなかったら企業存続すら危ぶまれた」(業界関係者)との声もある。倉庫や在庫が自社保有という特性も加わり、短期的な業績への影響は大きくなりそうだ。

インターリスク総研上席コンサルタント・吉村伸啓氏


 今回の火災は大型化と省人化が進む物流倉庫における「教訓」になる。倉庫での防火の考え方は(1)火を出さないための安全対策(2)出火したときの事後対応−の二つ。可燃物が多い倉庫では初期消火が非常に重要だ。

 だが、省人化のために出火の発見が遅くなる傾向にある。火災感知器の警報が鳴って出火に気づくよりも、人が直接火を見て気づく方が対応は早い。

 省人化によって火災を検知する時間が長くなっており、気づいた時に慌てて消火器で消しても、既に火が回ってお手上げ状態になってしまう。出火時に早い段階で迅速に消火することが非常に重要だ。

 また、焼損したアスクルの物流倉庫に一部ついていたスプリンクラーは、防火区画を設定する際の建築基準法を満たすために設置したようにもみえる。法律的にはクリアだが、火災リスクが高い物流倉庫だった可能性もある。スプリンクラーは一番信頼性が高いといわれている。

 行政の基準任せではなく、防火設備を増やすなどの企業側の積極的な対策による予防が重要だ。

日刊工業新聞2017年3月10日の記事に加筆・修正

森谷 信雄

森谷 信雄
03月14日
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物流はもちろん、一か所のセンターに商品を集め集中した方が効率がいい。しかし、今回のような事態になったらサプライチェーンはたちまち機能しなくなる。流通よりも、セットメーカーの方がこうした事態に備えた方がいいかもしれない。

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