LIXILの次期社長にモノタロウ会長。「工場版Amazon」はなぜ強いのか

瀬戸氏のリーダーシップで成長路線に戻れるか

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LIXILの藤森社長とモノタロウの物流センター(兵庫県尼崎市)
 LIXILグループは21日、藤森義明社長(64)が2016年6月の株主総会と取締役会を経て相談役に退き、後任にMonotaRO(モノタロウ)会長の瀬戸欣哉氏(55)を次期社長に充てる人事を発表した。藤森社長は同日、東京都内で開いた会見で、次期社長に内定した瀬戸氏について「起業家としてのリーダーシップとデジタル分野での専門性を兼ね備えた人物」と評価した。瀬戸氏は住友商事で米資材流通大手グレンジャーとの共同出資でモノタロウを立ち上げ、同社を上場させた実績を持つ。

「そこそこ安くて、そこそこ届くのが早い」ーニッチネット通販モデル


日刊工業新聞2014年6月2日付


 産業用副資材や自動車アフターマーケット商品など約700万点を扱うインターネット通信販売会社、MonotaRO。「工場版Amazon」「副資材業界のアスクル」とも呼ばれている。2000年の設立以後、毎年売上高を伸ばし、顧客口座数を100万以上に拡大。08年秋のリーマン・ショック時でさえ増収を確保した。副資材に特化した“ニッチネット通販”モデルが強みだ。

 「そこそこ安くて、そこそこ(届くのが)早い」。ある鉄工所社長はMonotaRO(モノタロウ)をこう評する。同社の通販は基本的に誰がどれだけ購入しても価格が同じ一物一価。15時までの受注で約80%(売り上げベース)の商品が即日出荷だ。「工具をまとめ買いする時は大手工具商社に注文した方が安いし、早く欲しい時は近所の工具販売店に頼めば、価格は高いが1時間で届く」(同)。

 しかし“そこそこ”の商品の点数がまとまり、ワンストップで購入できることに大きな意味がある。調達価格を下げるよりも調達プロセスのコストを下げた方がメリットが大きいことがある。その一つが副資材だ。

 汎用的なネジや作業工具など種類が豊富な副資材は単価が低いわりに、選定や価格交渉、納期管理、起票など調達担当者がやるべき作業が煩雑だ。1時間の価格交渉の末に1000円の値引きを“獲得”した、という笑えない話もある。モノタロウは、この問題に着目、ネット通販で副資材販売業界に参入した。

 ネット世界の勝負はある意味シンプル。顧客が何かを必要とした時、どのサイトを思い浮かべるかでまず“勝敗”が決まる。同社は副資材の分野に特化し、その中でカテゴリーを拡大・深掘りすることで商品点数を増やし、差別化できるサイトを実現。「副資材ならなんでもあり、大概のものは他社より早く届けられる」(鈴木雅哉社長)体制を構築した。7月に本格稼働する大型の新物流センターなど、顧客の利便性を高めるインフラ整備にも力を入れる。

新「商流」中小に支持され業績拡大


 さらに、ヤフーやグーグルなどの検索エンジンから商品を探す見込み顧客をいかに自社サイトに誘導するか。この勝負は、キーワード検索した際に自社サイトが上位に表示されるためのサーチエンジン最適化(SEO)対策がカギを握る。モノタロウは早くからSEO対策に取り組みネット上で露出を増やし、新規顧客を開拓してきた。今では、他のネット通販が副資材分野で同社に追いつくには、相当の資金投下が必要と見られている。

 一方、シンプルに勝ち負けがつかないのが、対面型営業を行う商社・販売店との競合だ。副資材の対面型の商流は、メーカーから卸、販売店、ユーザーが基本。同社は当初、メーカーから直接仕入れ、ユーザーへ販売するシンプルな商流を志向していた。しかし、多くのメーカーは販売価格の維持や対面型商社との付き合いを考慮し、同社への販売を敬遠。卸商社からも仕入れは思うように進まなかった。

 それでもネットを使い小規模事業者でも1個単位から安く利便性よく購入できる新しい商流の仕組みは、多くの中小事業者に支持された。ネットの可能性に早くから注目した創業者の瀬戸欣哉会長のリーダーシップも原動力に、業績は毎年拡大し存在感を高めていった。

「最初は商社に義理立てしていたメーカーが、ドミノ倒しのように次々とモノタロウへの販売に動きだした」(物流機器メーカー社長)。モノタロウの設立当初、同社に拒否感を示していた卸商社も、姿勢を変えていった。今では複数の大手卸商社が同社に製品を供給。ある上場卸商社のトップも「ネット販売のノウハウを蓄積したいとの思いもあり、今後取引を始める」と追随する。

 現在の仕入れはメーカー直接が25%、海外で生産委託するプライベートブランドが25%、商社経由が50%。当初掲げていたシンプルな商流からは変化したが、少なくとも商材の仕入れに不安はない。

データ「駆使」、メールで提案


 成長路線を歩むモノタロウだが、提案営業力では対面型商社に及ばないことを認識している。「対面の強みは営業社員が顧客の工場にどんな設備があって、どのようなワークフローで何を製造しているか頭にあること」(鈴木社長)という。新商品をどう活用したら生産コストが下がるかなどの提案が重宝される商材もある。切削工具商社の大阪工機は「モノタロウに乗り換えられた販売店もあるが、提案営業力の高い販売店は逆に業績を伸ばしている」(柳川重昌社長)と明かす。切削工具メーカーも対面型を重視し、モノタロウに直接商品を卸す企業はまだ少ない。

 しかしモノタロウも、提案商材とコモディティー商材の今の“すみ分け”状態を見過ごしてはいない。同社は膨大な購入履歴をもとにしたデータマイニングで定評がある。特定商品をプロモーションする際、過去の購買データや注文時期、ウェブのログ(閲覧履歴)などをもとに、購入期待値の高い顧客へメールなどで告知している。加えて、データマイニングを疑似提案営業にも活用。「顧客を説得する力は“人”には及ばないが、新商品がその人に有効かどうかを判断するのは機械学習で可能」(鈴木社長)とする。対面型営業の領域にも攻め込むモノタロウの新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。

鈴木雅哉社長インタビュー「大企業向けに再度挑む」


 2013年12月期の売上高は344億円で2010年12月期比で倍増。数ある上場企業の中で、企業買収などの特殊要因なしに3年で売上高を倍増した事例は極めて少ない。しかし設立時の目標は10年で売上高1000億円。設立14年目に入った同社にとって現状は満足のいく数字ではない。これまでの軌跡と、成長を加速する今後の戦略を鈴木雅哉社長に聞いた。

 ―当初の計画とのずれは、仕入れに苦戦したためですか。
 「ないないずくしのスタートだった。実は、当初のビジネスモデルは大企業向けの購買ソリューション。しかし1年たってもバイイングパワーもゼロだったし在庫もない。理念は間違っていなかったが、サービスレベルが伴っていなかった。そこで中小企業向けに手袋や安全用品、梱包用品などのコモディティーを通信販売する方針に切り替え、顧客と商品カテゴリーを増やした」

 ―カテゴリーはまだ増やしますか。
 「特定の業種をターゲットに商材を拡充していくと、似た業種の顧客から注文が入る。それを足がかりに次はその業種でコアとして必要な商材を扱う。その繰り返しでカテゴリーや商材はまだ増える。原材料以外は何でも扱うつもり。現在、商品も700万点となり、(販売量の少ない商品も含めて幅広くそろえる)ロングテールの戦略が使えるようになった。今期は大企業向け購買ソリューションに再度挑む」

 ―大企業の調達は値引きありきです。一物一価はそぐわないのでは。
 「当社は一物一価で、交渉による値引きはしていないが、月間総購入額などでのボリュームディスカウントは実施している。また、今期に投入する大企業向け購買管理システムは、モノタロウの販売価格より安い調達先があれば、システムに乗せられる仕組みで使い勝手はいい。ある会社の試算では、副資材の発注1行(最小単位)にかかるコストは3000円。人件費の高い大企業ではワンストップ購買によるプロセスコスト削減メリットが大きい」

 ―アマゾンジャパンが副資材分野を拡大しています。
 「かぶる商材が出てきているが、例えば工具といっても切削工具はなく作業工具にとどまっている。ただ副資材分野で品ぞろえを急拡大する可能性がなくはない。当社は『この商品はあるけどあれはない』とか『この商品安いけどあれが高い』というものを常に探して改善し、顧客の満足度を高める必要がある」
(文=大阪・坂田弓子)
※文中の内容は当時のもの

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

かなりのサプライズ人事。モノタロウは以前から注目していた会社。瀬戸氏はベンチャー経営者ともいえるが、もともとは住商。日本GEから招聘した藤森さんの経営は必ずしもうまくいったとはいえない。瀬戸氏への期待は大きいが、外部経営者のたらい回しにならないよう。

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