医療機器メーカー、トレーニング教育にご熱心なワケ

技術革新を生むヒントに。日本のノウハウ、海外にも

 医療機器各社は低侵襲で治療効果の高い革新的な機器を、日々生み出している。だが最新鋭の機器を安全に使用し、最大限の治療効果を得るためには、まず機器を使う医療従事者が技術を習熟することが不可欠だ。またトレーニングを通じ、医療従事者と緊密なコミュニケーションを図ることは、医療機器各社にとって新たなイノベーション(技術革新)を生むヒントになる。

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医療従事者向けトレーニング施設「東京サイエンスセンター」(川崎市川崎区)が6日、設立3年の節目を迎えた。

 低侵襲の外科手術や心臓血管系疾患治療、筋骨格系疾患治療などに関するシミュレーターを用意。実際の病院と同様の医療環境で、最新の医療機器のトレーニングができる。

 J&Jの日色保社長は「医療機器はあくまで医師のツール。医師の技術の習熟度によって副作用がない、手術後の経過が良いなど成果が違う。プロフェッショナルな教育は大事だ」と意義を強調する。

 幅広い診療領域に対応した教育プログラムも特徴の一つで、利用者は6月末時点で累計2万人以上に達した。日本の医療従事者の繊細な手技や医療技術に関する知見も共有し、日本に合った製品開発に生かすほか、日本の医師が“教師役”となりアジアの医療従事者に技術を教えるケースもある。

 今回、世界各国で展開するトレーニング施設や教育プログラムの一つに、同センターも位置付けられた。世界の施設ともより緊密な連携を促進することが期待できる。

 日色社長は「日本の意見を取り入れた機器が、世界の医療を変えることもある。満たされていない医療ニーズの中で、価値のある分野に投資する」と話す。

 テルモの「メディカルプラネックス」(神奈川県中井町)は、新たな医療技術の創造と普及を目指して設立した総合医療トレーニング施設だ。
テルモの総合医療トレーニング施設「メディカルプラネックス」(神奈川県中井町)

 病院や在宅医療を提供する住居など実際と同様の医療環境を再現しており、医療従事者に実践的なトレーニングを行うほか、商品開発で協業している。

 脳や心臓など精密な血管モデルや冠動脈病変を再現した同社独自のトレーニング器具などを用いて、高度なカテーテル治療についても基本的な研修ができる。

 また、集中治療室(ICU)や手術室、病棟、スタッフステーションなどを忠実に再現。患者の様態が急変した際に最善の医療行為をどう提供するかなど、医療従事者の“気づき”を導けるようなプログラムも各種用意し、医療の質や安全性の向上にも貢献している。

 施設の延べ床面積は2棟で約1万4000平方メートル。02年のオープンから約15年がたち、来訪者は医療従事者や協業先、代理店など延べ13万人を超える。

 メディカルプラネックスの桧山義雄副センター長は、「研究開発と医療技術の融合が基本概念。新しい製品で新しい治療技術が生まれる可能性がある。医療現場の意見を聞くことで、新しい開発のヒントをもらうことができる」と話す。

 日本メドトロニック(東京都港区)は9月1日、川崎市川崎区内に医療従事者向けのトレーニング施設「イノベーションセンター」を開設する。

 模擬手術室やドライラボ(模型の器官を使う実験室)、会議室、ショールームなどを設け、低侵襲の外科手術や心臓・血管治療に関する手技のトレーニング、シミュレーショントレーニング、各種セミナーなどのプログラムを提供する。同社の製品を安全で効果的に使用してもらうのが目的だ。

 また、より効率的で効果的に最新の技術や知識、情報を得られるように、最先端の音響映像システムやカンファレンスシステムを導入するほか、コンピューターグラフィックス(CG)技術を駆使した展示物なども予定している。建屋は4階建で延べ床面積は5700平方メートルで、初年度の来場者として約3000人を見込んでいる。
日本メドトロニックのトレーニング施設「イノベーションセンター」

(文=村上毅)

日刊工業新聞2017年8月17日

村上 毅

村上 毅
08月18日
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日本メドトロニックのトニー・セメド社長が「治療効果を上げ、医療経済性に効果がある製品・サービスを提供するためには、医療従事者などとのパートナーシップ(協力関係)は不可欠」と話しセンターの利用促進に力を注ぐという。

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