3つのアジア高速鉄道、実績を一つでも作りたいチーム日本
“官民一体” で攻勢強める
日本が関わるインド、シンガポール―マレーシア間、タイの高速鉄道プロジェクトの着工や入札が間近に迫ってきた。経済成長が続くアジアを中心に高速鉄道プロジェクトが立ち上がる中、日本は安倍晋三首相のトップセールスなどで、新幹線の安全性や定時性をアピールしてきた。各国の政治に大きく左右され、紆余(うよ)曲折を経つつも、官民一体の取り組みが奏功しつつある。
インドはムンバイ―アーメダバード間の500キロメートルについて、2015年12月の日印首脳会談で日本の新幹線方式の採用を決定。
JR東日本の子会社である日本コンサルタンツ(東京都千代田区)が、国際協力機構(JICA)から路線の検討、設計などを受注し、深く関わってきた。
同プロジェクトは現在、日本式のスラブ軌道の試験線約50キロメートルを建設し、それを本線に適用することを前提に計画が進められている。
試験線工事の入札はすでに終わっており、9月に予定されている安倍首相のインド訪問の際に、起工式を実施する方向で日印間の調整が進む。
日本側の課題は、インドへの技術移転だ。インドはあくまで自分たちで建設することを前提に、日本式の導入を決めた背景がある。
試験線についても、日本コンサルタンツが仕様などを決めたが、「日本の技術をベースにしているが、現地生産を前提に気候条件などが違うインドに向けてカスタマイズした」(JR東日本)と話す。
日本の役割はあくまで技術を教える先生であり、試験線の建設を担うのも、インドのゼネコンなどが組成するコンソーシアムとみられている。
このため、日本式の導入が決まった後、JR東日本が中心となり、土木、信号、軌道、電気といった分野別に企業同士の交流の場を設けるなど、日印企業のマッチングなどを進めている。
ムンバイとアーメダバードは、インドの中でも屈指の大都市であり、沿線も100万―200万人の都市が続く、人口密集地帯だ。
「高速鉄道の必要性が高く、魅力的な条件」(同)と、すでに新幹線の整備の余地がほとんどない日本では考えられない市場環境がインドにはある。
インドは23年に運行を開始する計画。だが、「建設には5年は必要。逆算すると、18年には着工しないと間に合わない」(日本貿易振興機構)と、時間的な余裕はない。技術移転を進めながら、5年で設備を完成して走らせる、という難しい課題を背負っている。
インドの着工や、シンガポール―マレーシアの受注を前に、JR東日本は6月の機構改革で、国際事業の部署を事業本部に格上げした。
また、国際事業に関連した副社長を、インド高速鉄道担当と国際事業本部担当分けて2人置くなど、万全の態勢を整えた格好だ。
JR東日本は12年に策定した中期経営計画で国際事業の強化を打ち出した。その後、タイの都市近郊線・「パープルライン」への参画など、実績を積み重ねてきた。当初、10人で始まった国際事業の部署は、現在240人まで増員し、世界各地に人員を配置している。
<次のページ、能性が高いシンガポール―マレーシア>
インドはムンバイ―アーメダバード間の500キロメートルについて、2015年12月の日印首脳会談で日本の新幹線方式の採用を決定。
JR東日本の子会社である日本コンサルタンツ(東京都千代田区)が、国際協力機構(JICA)から路線の検討、設計などを受注し、深く関わってきた。
同プロジェクトは現在、日本式のスラブ軌道の試験線約50キロメートルを建設し、それを本線に適用することを前提に計画が進められている。
試験線工事の入札はすでに終わっており、9月に予定されている安倍首相のインド訪問の際に、起工式を実施する方向で日印間の調整が進む。
インド「18年には着工しないと間に合わない」
日本側の課題は、インドへの技術移転だ。インドはあくまで自分たちで建設することを前提に、日本式の導入を決めた背景がある。
試験線についても、日本コンサルタンツが仕様などを決めたが、「日本の技術をベースにしているが、現地生産を前提に気候条件などが違うインドに向けてカスタマイズした」(JR東日本)と話す。
日本の役割はあくまで技術を教える先生であり、試験線の建設を担うのも、インドのゼネコンなどが組成するコンソーシアムとみられている。
このため、日本式の導入が決まった後、JR東日本が中心となり、土木、信号、軌道、電気といった分野別に企業同士の交流の場を設けるなど、日印企業のマッチングなどを進めている。
ムンバイとアーメダバードは、インドの中でも屈指の大都市であり、沿線も100万―200万人の都市が続く、人口密集地帯だ。
「高速鉄道の必要性が高く、魅力的な条件」(同)と、すでに新幹線の整備の余地がほとんどない日本では考えられない市場環境がインドにはある。
インドは23年に運行を開始する計画。だが、「建設には5年は必要。逆算すると、18年には着工しないと間に合わない」(日本貿易振興機構)と、時間的な余裕はない。技術移転を進めながら、5年で設備を完成して走らせる、という難しい課題を背負っている。
インドの着工や、シンガポール―マレーシアの受注を前に、JR東日本は6月の機構改革で、国際事業の部署を事業本部に格上げした。
また、国際事業に関連した副社長を、インド高速鉄道担当と国際事業本部担当分けて2人置くなど、万全の態勢を整えた格好だ。
JR東日本は12年に策定した中期経営計画で国際事業の強化を打ち出した。その後、タイの都市近郊線・「パープルライン」への参画など、実績を積み重ねてきた。当初、10人で始まった国際事業の部署は、現在240人まで増員し、世界各地に人員を配置している。
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日刊工業新聞2017年08月09日