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「私が学んだこと」ーGEに受け継がれるジェフ・イメルト10の学び

「リーダーシップとは、自分たち自身の内面を深く探っていく旅のようなもの」
「私が学んだこと」ーGEに受け継がれるジェフ・イメルト10の学び

ジェフ・イメルト GE会長兼CEO(~2017.7.31 在任)

 ―これは、ジェフ・イメルト本人が記し、7月31日(米国時間)GEの全社員に共有した、彼のブログ投稿全文の抄訳だ―

 今日は私がGEのCEOを務める最後の一日であり、明日からはジョン・フラナリーがこのプレミア・デジタル・インダストリアル・カンパニーを率いていきます。私はジョンと20年にわたる付き合いがありますが、彼は思慮深く、規律をもち、周囲を鼓舞していくリーダーです。私たちのチームはもちろん、顧客の皆様も、彼の判断や着眼点を尊重しています。彼はまさに、将来へ向けGEを導いていくにふさわしい人物です。

 この役割の移行において、私はジョン、そして主要なステークホルダー達と密に関わっていきます。しかし、このブログの更新は今回が最終回です。そこで今回は、GEを率いる間に私が学んだレッスンをいくつか紹介したいと思います。リーダーシップはいわば一幕物のお芝居のようなもの。ジョンはジョンらしい方法で、それを進めていくでしょう。その一方、学習することはすべての優れたリーダーがもつべきDNAの一部です。私も学ぶことを止めませんでしたし、ジョンもこの先さらに成長し続けていくことでしょう。

1. 高い水準の目的を設定する
 常に未来を思い描き、視点を持っていることが重要です。具体的には、目標を高く掲げ、仲間たちがそこに責任を感じ続けられるようにすること。評価を維持するために、いかなる戦いも厭わないこと。いつ、いかなる時も注意を怠らないこと。敬意を忘れず、意欲をかき立てるようなコンペティターであり続けること。常に重要なことにフォーカスすること。こうしたことが求められます。

2. 極めて重要な判断を下す
 配当を下げる、NBCユニバーサルを売却する、アルストムを買収する…、こんな大きな決断は、誰だって本当はしたくはありません。しかし、CEOというものはいかなる審判や批判も恐れてはいけません。実際に自分がそのリスクに晒された立場になければ、どんな仕事や決断も簡単に見えるものです。そして、どんな時も正攻法を採るべきことを忘れてはいけません。私は、自分自身をコントロールできても、世の中の出来事はコントロール不能なのだということを(とても厳しい方法で)学んできました。そんな中でも、優れたリーダーたちというのは正攻法を選択するものです。

3. 未来は訪れる。将来への投資を謝罪する必要はないこと
 「長期」には、単に「短期」が繋がって成すもの以上の意味があります。そこには思想というものが存在します。インダストリアル・インターネットやアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形技術)は、これからのGEを定義づけるものになっていくでしょう。あきらめてはいけません。GEの優れた事業部門は、まるで狂いのない「北」を示す羅針盤のように、未来を形成する指針を持っていました。時として、株主は異なる時間軸でものを考え、プロセス以上に数字を重視することもあります。しかし優れたビジネスパーソンは、未来に向けた旅にも 価値を見いだしてくれるものです。

4. 認識と現実をシンクロさせること
 これはなにも、正直であれ、という意味ではありません。正直であることは簡単なことです。しかしコンテキスト(文脈)を伴わない事実は、真実と呼べるものではありません。ともすると人は「自分の頭の中にあるすべてを明かす」ことを、正直になることだと言いがちです。しかしそれでは、自分の気持ちは晴れても周りを不快するだけです。大切なのは、常に透明性を維持し、解決策をもたらすこと。事実は、進歩のための道筋であって、批判のためのものではありません。真実を告げるには、事実とコンテキストの両方が必要なのです。

5. 大小、そして長期、短期を網羅した行動を取ること、そして考えの多くを自分の中に留めておくこと
 最高のリーダーたちというのは、多才な思想家たちです。全体の戦略も、個々の詳細も理解しなくてはなりません。今後10~20年のグローバルな視野を持ち合わせるとともに、四半期ごとの状況も把握していなければいけません。その上で、自分からすべてを口にしてしまうのではなく、他の人が結論を締めくくれるようにすることも重要です。

6. ほかの人に代理をまかせること
 自分のチームを信頼することが大切です。ものごとが最もスピーディに進むのは、チームに目的意識があり、権限が移行されているケース。グローバル化やデジタル化、エコマジネーションなど、私たちがこれまで成功を収めてきたイニシアチブの陰では、常にこうした強力なチームが素早く行動し、GEの企業スケールをうまく活用してきました。組織の権限は、組織内で分配されているべきものです。

7. 成功はマーケットで収めるものであり、会議室で勝ち取るものではない
 ともすると社内のあれこれに捕らわれてしまいがちですが、私たちの成功を決定づけるのは顧客である、と私は心から信じています。未来のために交渉を図るような「スカウト(偵察者)」たちを自分の周りに置き、彼らの声に耳を傾けることが重要です。そして、進んで実験に取り組み、時には失敗もしてみることです。成功を収めるためには、口先だけでなく、行動が必要だからです。GEは今、記録的なバックログとマーケットシェアを保持しており、それは将来にわたって利益をもたらしてくれるでしょう。企業としてマーケットをリードしていくことは必須のこと、いわば酸素のようなものです。

8. 肩書きよりも仕事そのものを好きになること
 私はこれまで、従業員と投資家のために仕事をしてきました。ですから、カンファレンスへや外部会議への出席といった、主要な業務以外のことに携わるのは、ちょっとしたブレイクのようなもの。自分がCE0であることを気にしたことはあまりありませんが、CEOがこなす仕事の多彩さは大好きでした。どんな仕事もおろそかにしたことはありません。GEでは、目的意識とコミットメントが意義を持つのです。

9. 決してあきらめないこと
 マイク・タイソンは「鼻にパンチを食らうまでは、誰だって戦略を持って試合に臨んでいる」と言いました。私は、自分たちならもっと良くなれると常々思っています。どれだけ早く学べるか? どれだけ変化させることができるか? 何を差し出すことができるか? 何を我慢しなければならないか? リーダーシップとは、自分たち自身の内面を深く探っていく旅のようなものです。

10.すべての瞬間、リーダーとして、すべてを差し出すこと。仕事と、そこに携わるスタッフと職務に常に感謝すること
 GEのチームと過ごした毎分ごとが、私にとって、この世界中で何よりも大切なものでした。たとえば、私が会った航空機エンジンのエンジニアや医療機器の部品を手がけるエンジニアたち。彼らほど、仕事に全力を注ぐエンジニアに会ったことはありません。そうした人々と個人的な関係を築くのです。どんな分野であれ、高いパフォーマンスを発揮している人たちは、意味のある仕事をしたい、より大きな何かを成し遂げるための力になりたいと思っているものです。GEを率いるには、こうした一人一人の想いにフォーカスし、共に最高の仕事ができるようにサポートしていく必要があります。

 GEは今や、世界的にも強大なインフラストラクチャー企業です。世界でも最も重要な産業領域においてマーケットをリードしながら、フォーカスを絞り且つ奥の深い事業ポートフォリオを築き上げることで、自らの戦略、企業文化を再構築してきました。一方で、私たちはこれまでと変わることなく、目的意識を強く持ち、献身的で意欲にあふれる人々が働く企業であり続けました。最高のスタンダードを持った能力主義の企業。世界中のチーム、顧客のため、そしてあらゆる形のダイバーシティに対して尽力します。

 GEで働く私たちは皆それぞれに、様々な理由でこの歴史的な企業にやってきました。多くの人は、もっと何かを成し遂げたい、もっと大きな仕事に参画したい、それによって自分たちが関わる世界に違いを生み出したい、という思いでGEに入社したことと思います。今日も、そして明日も、その仕事は続いていきます。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
イメルト、どこか日本企業がトップとして招聘しないかな、と思う。

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