ニュースイッチ

「最初の“ひと転がり”を担う」 パナソニックのR&Dトップ、新部門後押し

専務執行役員・宮部義幸氏に聞く「今まで以上に大変だ」
「最初の“ひと転がり”を担う」 パナソニックのR&Dトップ、新部門後押し

宮部義幸氏

 ―研究開発費を増やす分野はどこですか。
 「自動車IT化の開発費が大きい。2―3年開発してきた車向けの安全・信頼性を持つプラットフォームは2017年度に開発を終えたい。蓄電池の容量と安全性の向上や革新技術にも力を入れる」

 ―人工知能(AI)やビッグデータ(大量データ)の活用が進めば、どんな変化があるでしょうか。
 「今はセンサーやネットワークが安価になり、大量のデータを効率よく集められる。従来の統計学を超える、新しい発見を求めて世界的に勝負している。それを見つけて事業活動や商品に反映する意義は大きい」

 ―本社に既存事業を破壊しかねない新事業を進める部門を設けました。
 「事業部門が体験していない技術を事業化するには、少なくとも最初の“ひと転がり”を本社研究部門が主体的に担う必要がある。これまでもデジタル技術に移行する際、同じことがあった。今回は製品がIoT(モノのインターネット)化し、流通形態も変わる。今まで以上に大変だ」

 ―自動運転技術の開発は、どのレベルを目指しますか。
 「最終的には自動運転車を作り上げる力を持つことだ。自前で完結できなければ顧客である車メーカーも任せられない。車を走らせるノウハウは少ないので、開発中のコミューターは時速30キロメートル程度だが、段階的に高速運転までやりたい」

 ―政府の方針や施策に要望はありますか。
 「第4次産業革命の対象はデジタル情報だが、日本の消費者情報は米大手IT企業が握る。外国との法制度の非対称性を見直し、国内事業者が海外勢と同じテーブルで戦える環境が必要だ」

 「また低炭素社会に向け、車の電動化が進むと二次電池が大量に必要。工場は民間企業で抱えられる規模を超える。発電所や空港などのインフラと同様に考え、設備保有の方法など支援策を考えてほしい」
(大阪・錦織承平)
日刊工業新聞2017年7月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
パナソニックは5年でAI人材を1000人に増やす計画。採用活動のほか、大学と連携し、社内人材のスキルチェンジも進める。米シリコンバレーの研究開発人員も現在の約10人から100人規模に増やす方向だ。AI関連企業のM&A(合併・買収)も検討する。有能な研究人材の確保は他社同様、喫緊の課題だ。 (日刊工業新聞大阪支社・錦織承平)

編集部のおすすめ