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今、バスのイノベーションが面白い!

大手2社、ドライバーの負荷軽減や安全面で新機能。中古車は「再発明」
今、バスのイノベーションが面白い!

バス内で調理と飲食ができるように改造する

 いすゞ自動車は大型路線バス「エルガ」を一部改良し、8月8日から発売する。9月から適用される2016年排出ガス規制に適合させたほか、車両総重量14トン超の機械式自動変速機(AMT)車で15年度重量車燃費基準プラス15%を達成した。消費税抜きの東京地区希望小売価格は、代表車型で2466万6000円。エルガシリーズ全体で年間600台の販売を目指す。

 改良したエルガのヘッドランプには、長期間使用可能な発光ダイオード(LED)式ランプを採用。夜間の視認性を高めたほか、メンテナンスコストの削減を図った。運転席のシフトレバーの位置と形状を変更したことで足元のスペースが広がり、ドライバーの運転環境を改善した。

 一方、日野自動車 大型観光バス「日野セレガ」に対人検知が可能な衝突被害軽減ブレーキ「PCS」を標準搭載して発売した。新たに機械式自動変速機(AMT)「プロシフト」搭載車型を設定した。すでに標準搭載する車線逸脱警報や車両安定制御システム「VSC」と合わせることで安全性能を高めた。
大型路線バス「エルガ」

乗務員の体調変化を把握


 既存バスのイノベーションも進む。NECは、小田急シティバス(東京都世田谷区)と連携し、ウエアラブル端末による生体情報の収集・活用実験を実施した。乗り合いバスの乗務員の体調変化を素早く把握し、安全運行の支援につなげるという。

 実証実験では、乗務員が装着したリストバンド型のウエアラブル端末を用いて、勤務中の乗務員の脈拍や表面温度、湿度、体の揺れなどを測定。測定したデータはスマートフォンを介してクラウド上へ収集・蓄積する。乗務員ごとに疲労度の判定に使用することで、本人でも気付かない乗務中の体調の変化や疲労の見える化を可能とした。

 事業所から離れて業務を遂行するバス・鉄道乗務員の体調変化を見守り、働き方の改善や職場環境の整備に貢献することを目指す。

 ビットモータース(兵庫県たつの市、和田昭敏社長)は中古のバスを移動販売店に改造する事業を始めた。価格はバス代と改造費代を含めて1台500万円から。バスを使った飲食店の運営方法なども含めたビジネスモデルとして提供する。

 同社は工業デザイナーの和田社長が立ち上げたベンチャー企業。バス車内をデザインし、地元の自動車会社などと協力して改造する。カフェ風のデザインなどの要望にも応じる。自社用に改造した移動販売車「バス亭」はガスコンロや冷蔵庫、カウンターなどを設置。バス車内で10人が飲食できる。バス亭は兵庫県内で、たつの市や佐用町の駐車場に移動し昼はチキンカレーを提供。夜は予約制のスタンドバーとして活用している。

 人口減少が著しい地方では店舗型の飲食店経営は難しい。一方で「山間部は飲食店が少なく、うまく移動することで収益が出せる」(和田社長)という。被災地などで温かい食べ物を提供する用途も見込む。

海外でも貢献


 トヨタ自動車が設立したトヨタ・モビリティ基金(TMF)が助成するベトナム・ダナン市の交通渋滞多様化プロジェクトで、市内循環バスの運行などが始まった。助成総額は約3億2000万円。バイクや自動車の登録数が5年間で約40%上昇したダナン市では渋滞の深刻化が懸念されているため、交通手段の多様化により渋滞の未然防止を目指していく。

 プロジェクト期間は2015年7月から19年3月まで。市内循環バス(TMFバス)は40人乗り6台、28人乗り2台の合計8台を運行し、ほかの交通手段と統合した電子支払いシステムの導入を予定する。バスへの乗り換えを促すため、自家用車やバイクの路外・路上駐車場も整備した。

 TMFの永田理事務局長(トヨタ副社長)は「今後は実際の利用状況を踏まえて改善を行い、より良いモビリティサービスの実現したい」と話す。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
次世代モビリティにおいてバスの重要性はもっともっと高まるはず。規制をなるべく減らし、いろいろな機能やアイデアを実現して欲しいところ。

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