ボッシュVSデンソー、自動運転市場の覇権を握るのはどっちだ!?
自動車部品メーカーの巨人、100年に一度の変革に挑む
世界最大の自動車部品メーカーである独ロバート・ボッシュとデンソーが100年に一度とも言われる自動車産業の変革に果敢に挑んでいる。両社ともに自動運転や電動化の中核技術をそろえ、完成車メーカーに必要なシステムを提案する体制を整えつつある。日独自動車部品メーカーの巨人の戦略を追った。
のどかな田園風景が広がる独南西部のボックスベルク市で開かれたボッシュの自動車技術イベント。グループ最大のテストコースには最新の自動運転技術を搭載した車がずらりとならんだ。中でもひときわ注目を集めたのが米テスラの電気自動車(EV)をベースにした自動運転車だ。
運転手がステアリングのボタンを数秒間押し続けると車両による運転制御に切り替わる。緊急時を除きシステムが運転する「レベル3」に相当。ミリ波レーダー、ステレオカメラなどに加え、高い認識性能を持つ赤外線レーザースキャナー「ライダー」を採用。車の周辺環境を正確にとらえ、自動走行できる。
ボッシュは2月にライダーを手がけるベンチャーに出資し、同技術を取得した。「自動運転に必要なセンサーはそろった。信頼性の高い自動運転システムを提供できる」。
ボッシュドライバーアシスタンス部門シニアバイスプレジデントのシュテファン・シュタース氏はこう断言し自信に満ちた笑顔をみせた。
自動運転技術の高度化に向けて着々と歩を進めるボッシュ。4月には独ダイムラーと市街地を走り運転手の操作が不要な「レベル4」の完全自動運転車の共同開発で提携し、2020年初めの市場投入を目指す。
将来は運転手がいらない「レベル5」に相当するロボットタクシーの実用化も視野に入れる。
自動運転ビジネスで死角がないように見えるボッシュだが、「(自動運転技術の)レベル4、5に向けて人工知能(AI)の開発強化が課題」とシュタース氏は指摘する。
市街地で安全な自動走行を実現するにはセンサーによる高度な認識技術だけでなく、センサーデータを元に多様なリスクを想定して走行対応するための「頭脳」が必要。この頭脳を担うのがAIだ。
業界内外で車用AIの開発競争が過熱しており、ボッシュも一層のてこ入れが必要だった。そこで今年、米半導体大手エヌビディアとの提携を決め、自動運転車用AI搭載コンピューターの開発に着手した。
エヌビディアが持つ機械学習アルゴリズム搭載の半導体を活用し、20年初めに量産する。ボッシュはこのほか独シュツットガルトなど世界3カ所にAIの研究施設を開設し技術者を配置する予定。今後5年間で3億ユーロを投じる。AI研究を強化し自動運転技術の高度化を加速する。
ボッシュが自動運転と並んで経営資源を集中しているのが電動化への対応だ。同社の小型電気自動車(EV)のコンセプトモデル「eGO」はその象徴。
モーター、バッテリーといった基幹部品はもちろん、ディスプレーや情報表示用のアプリケーションソフトまで中身はすべてボッシュ製。eGOのような4輪車のほか2輪車、3輪車向けシステムをワンパッケージで提供していく。
電動車両は環境規制が厳しくなる中国や欧州で普及が見込まれるほか、インド政府が30年に国内販売車両をEVのみにする構想を打ち出した。
「ボッシュのシステムを使えば、あらゆる企業が1―1年半程度の短期間で電動車両を市場に投入できる」(オートモーティブエレクトロニクス事業部長のハラルド・クリューガー氏)。ボッシュは完成車メーカーのほか電動車両を使った事業を展開したい新興メーカーや異業種との取引も狙う。
自動運転も電動化も自社に足りない技術があれば豊富な資金力をバックに次々と有力企業と手を組み、一気に駒を進める。ボッシュはスピード勝負で100年に一度の荒波を乗り越える。
<次のページ、「第2の創業期」(デンソー社長)>
のどかな田園風景が広がる独南西部のボックスベルク市で開かれたボッシュの自動車技術イベント。グループ最大のテストコースには最新の自動運転技術を搭載した車がずらりとならんだ。中でもひときわ注目を集めたのが米テスラの電気自動車(EV)をベースにした自動運転車だ。
運転手がステアリングのボタンを数秒間押し続けると車両による運転制御に切り替わる。緊急時を除きシステムが運転する「レベル3」に相当。ミリ波レーダー、ステレオカメラなどに加え、高い認識性能を持つ赤外線レーザースキャナー「ライダー」を採用。車の周辺環境を正確にとらえ、自動走行できる。
ベンチャーに出資、自動運転に必要なセンサーはそろう
ボッシュは2月にライダーを手がけるベンチャーに出資し、同技術を取得した。「自動運転に必要なセンサーはそろった。信頼性の高い自動運転システムを提供できる」。
ボッシュドライバーアシスタンス部門シニアバイスプレジデントのシュテファン・シュタース氏はこう断言し自信に満ちた笑顔をみせた。
自動運転技術の高度化に向けて着々と歩を進めるボッシュ。4月には独ダイムラーと市街地を走り運転手の操作が不要な「レベル4」の完全自動運転車の共同開発で提携し、2020年初めの市場投入を目指す。
将来は運転手がいらない「レベル5」に相当するロボットタクシーの実用化も視野に入れる。
「レベル4・5」に向けAI開発が課題
自動運転ビジネスで死角がないように見えるボッシュだが、「(自動運転技術の)レベル4、5に向けて人工知能(AI)の開発強化が課題」とシュタース氏は指摘する。
市街地で安全な自動走行を実現するにはセンサーによる高度な認識技術だけでなく、センサーデータを元に多様なリスクを想定して走行対応するための「頭脳」が必要。この頭脳を担うのがAIだ。
業界内外で車用AIの開発競争が過熱しており、ボッシュも一層のてこ入れが必要だった。そこで今年、米半導体大手エヌビディアとの提携を決め、自動運転車用AI搭載コンピューターの開発に着手した。
エヌビディアが持つ機械学習アルゴリズム搭載の半導体を活用し、20年初めに量産する。ボッシュはこのほか独シュツットガルトなど世界3カ所にAIの研究施設を開設し技術者を配置する予定。今後5年間で3億ユーロを投じる。AI研究を強化し自動運転技術の高度化を加速する。
「eGO」にみる電動化の未来
ボッシュが自動運転と並んで経営資源を集中しているのが電動化への対応だ。同社の小型電気自動車(EV)のコンセプトモデル「eGO」はその象徴。
モーター、バッテリーといった基幹部品はもちろん、ディスプレーや情報表示用のアプリケーションソフトまで中身はすべてボッシュ製。eGOのような4輪車のほか2輪車、3輪車向けシステムをワンパッケージで提供していく。
電動車両は環境規制が厳しくなる中国や欧州で普及が見込まれるほか、インド政府が30年に国内販売車両をEVのみにする構想を打ち出した。
「ボッシュのシステムを使えば、あらゆる企業が1―1年半程度の短期間で電動車両を市場に投入できる」(オートモーティブエレクトロニクス事業部長のハラルド・クリューガー氏)。ボッシュは完成車メーカーのほか電動車両を使った事業を展開したい新興メーカーや異業種との取引も狙う。
自動運転も電動化も自社に足りない技術があれば豊富な資金力をバックに次々と有力企業と手を組み、一気に駒を進める。ボッシュはスピード勝負で100年に一度の荒波を乗り越える。
<次のページ、「第2の創業期」(デンソー社長)>
日刊工業新聞2017年7月14日 「深層断面」