トヨタの北米新本社が稼働。意思決定「より速く、シンプルに」
「北米ワントヨタ」へ製販・金融・渉外など統括機能を集約
トヨタ自動車は米テキサス州で北米新本社を稼働させた。総額約1100億円を投じ、米国内4カ所に分散していた製造、販売、金融、渉外などの統括機能を新本社に集約。1000人以上の新規雇用者を含め、年内に約4000人の従業員が勤務する予定だ。組織を効率化し、意思決定の迅速化や社内連携の強化につなげる。
現地時間6日に開いた開所式にはトランプ米大統領がコメントを寄せ、「製造業を米国に取り戻すことは最優先課題の一つ。北米トヨタの取り組みを誇りに思う」と称賛した。
北米統括会社社長を務めるトヨタのジム・レンツ専務役員は「連携やイノベーションを生み出し、意思決定を加速できる」と述べた。
トヨタは2014年、北米拠点の機能集約を進める「北米ワントヨタ」構想を公表。テキサス州プレイノの約40万平方メートルの土地に新本社を建設してきた。製造や販売などはプレイノに集約する一方、研究開発や調達などはミシガン州アナーバーへの移転を進める。
トヨタは1月、米国内で雇用拡大を求めるトランプ大統領に呼応する形で、米国に今後5年間で約1兆1000億円の投資計画を発表。今回の新本社建設費もこれに含まれる。このほかインディアナ州やケンタッキー州の既存工場の刷新にも投資する計画だ。
トヨタ自動車が米テスラの保有株をすべて売却していたことが明らかになった。2010年に資本・業務提携して電気自動車のEVの共同開発を進めたてきたが、協業効果が発揮できたなったためとみられる。豊田章男社長は「現在の自動車産業はパラダイムシフトが求められている」とし、テスラや米ウーバー・テクノロジーズなどと手を組んできたが、彼らのような“ゲームチェンジャー”はもはやライバル。自ら成長戦略を描き始めた。
「新興企業をしっかり見ていかないと見誤る」。自動運転車の開発が話題のIT大手のグーグル(担当は持ち株会社アルファベット子会社のウェイモ)、米アップル、配車サービスのウーバー・テクノロジーズ、電気自動車(EV)の米テスラ…。これら企業の社名が、トヨタ首脳の口から躊躇(ちゅうちょ)なく飛び出す。自動車業界に変革を促す新規参入組だ。
「そういった企業が紹介されるときに、トヨタも触れられるようにしなければならない」(トヨタ首脳)。時価総額で米ゼネラルモーターズ(GM)を抜いたテスラとは、共同開発したEV仕様のスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」を米国で発売した。ウーバーとも16年に資本・業務提携し、海外でライドシェア(乗り合い)関連の協業を進める。
しかしウーバーが進めるライドシェアは自動車需要を減衰する恐れがあり、テスラが取り組むEVの普及はガソリン車市場を脅かしかねない。トヨタが変革者と同じ土俵で戦うには、組織の巨大化による構造的な問題と向き合わなければいけない。
「いつまでも『三河の鍛冶屋』でいいわけがない。トヨタは移動サービスのプラットフォーマーにならなくてはいけない」。トヨタの友山茂樹専務役員の表現は過激だ。
20年までに日米で販売するほぼすべての乗用車に車載通信機(DCM)を搭載。DCMが吸い上げた情報で基盤(プラットフォーム)を構築し、カーシェアやライドシェア(相乗り)、テレマティクス保険といった車を使ったあらゆるサービス事業者と提携する戦略を描く。
つながる車にしても自動運転にしても、将来はクラウドに付加価値が移る可能性がある。携帯電話でも同じことが起きた」(友山専務役員)。車を作って売る事業モデルから、車を使った移動サービスにも収益源を広げる必要があるとの考えだ。
「新プリウスPHVはコネクティッド戦略の先陣を切るクルマ」(友山専務役員)だ。今冬発売予定の新型プラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」はほぼ全車にDCMを標準搭載し、通信料は3年間無料。
スマホから車の充電確認やエアコン操作をできるようにするほか、走行情報などのビッグデータ(大量データ)を駆使して車の故障可能性を事前に知らせるサービスなども始める。
昨年1月には米カリフォルニア州シリコンバレーに、人工知能(AI)研究・開発子会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」を新設。同年12月にはEVの企画・開発を担当する社内ベンチャー組織「EV事業企画室」を発足させた。
18年3月期は研究開発費1兆500億円と過去最大規模を計画する。豊田社長は「意志ある踊り場」「年輪的成長」と、将来に向けた基盤固めや着実に成長する会社の姿を表現してきた。巨大企業となり、以前のように大きく成長する局面ではなく足踏み状態。09年から始まった豊田社長体制において、今が最も難しい局面かもしれない。
現地時間6日に開いた開所式にはトランプ米大統領がコメントを寄せ、「製造業を米国に取り戻すことは最優先課題の一つ。北米トヨタの取り組みを誇りに思う」と称賛した。
北米統括会社社長を務めるトヨタのジム・レンツ専務役員は「連携やイノベーションを生み出し、意思決定を加速できる」と述べた。
トヨタは2014年、北米拠点の機能集約を進める「北米ワントヨタ」構想を公表。テキサス州プレイノの約40万平方メートルの土地に新本社を建設してきた。製造や販売などはプレイノに集約する一方、研究開発や調達などはミシガン州アナーバーへの移転を進める。
トヨタは1月、米国内で雇用拡大を求めるトランプ大統領に呼応する形で、米国に今後5年間で約1兆1000億円の投資計画を発表。今回の新本社建設費もこれに含まれる。このほかインディアナ州やケンタッキー州の既存工場の刷新にも投資する計画だ。
日刊工業新聞2017年7月10日
テスラとの提携解消、自ら「変革者」に
トヨタ自動車が米テスラの保有株をすべて売却していたことが明らかになった。2010年に資本・業務提携して電気自動車のEVの共同開発を進めたてきたが、協業効果が発揮できたなったためとみられる。豊田章男社長は「現在の自動車産業はパラダイムシフトが求められている」とし、テスラや米ウーバー・テクノロジーズなどと手を組んできたが、彼らのような“ゲームチェンジャー”はもはやライバル。自ら成長戦略を描き始めた。
「新興企業をしっかり見ていかないと見誤る」。自動運転車の開発が話題のIT大手のグーグル(担当は持ち株会社アルファベット子会社のウェイモ)、米アップル、配車サービスのウーバー・テクノロジーズ、電気自動車(EV)の米テスラ…。これら企業の社名が、トヨタ首脳の口から躊躇(ちゅうちょ)なく飛び出す。自動車業界に変革を促す新規参入組だ。
「そういった企業が紹介されるときに、トヨタも触れられるようにしなければならない」(トヨタ首脳)。時価総額で米ゼネラルモーターズ(GM)を抜いたテスラとは、共同開発したEV仕様のスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」を米国で発売した。ウーバーとも16年に資本・業務提携し、海外でライドシェア(乗り合い)関連の協業を進める。
しかしウーバーが進めるライドシェアは自動車需要を減衰する恐れがあり、テスラが取り組むEVの普及はガソリン車市場を脅かしかねない。トヨタが変革者と同じ土俵で戦うには、組織の巨大化による構造的な問題と向き合わなければいけない。
「いつまでも『三河の鍛冶屋』でいいわけがない。トヨタは移動サービスのプラットフォーマーにならなくてはいけない」。トヨタの友山茂樹専務役員の表現は過激だ。
20年までに日米で販売するほぼすべての乗用車に車載通信機(DCM)を搭載。DCMが吸い上げた情報で基盤(プラットフォーム)を構築し、カーシェアやライドシェア(相乗り)、テレマティクス保険といった車を使ったあらゆるサービス事業者と提携する戦略を描く。
つながる車にしても自動運転にしても、将来はクラウドに付加価値が移る可能性がある。携帯電話でも同じことが起きた」(友山専務役員)。車を作って売る事業モデルから、車を使った移動サービスにも収益源を広げる必要があるとの考えだ。
「新プリウスPHVはコネクティッド戦略の先陣を切るクルマ」(友山専務役員)だ。今冬発売予定の新型プラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」はほぼ全車にDCMを標準搭載し、通信料は3年間無料。
スマホから車の充電確認やエアコン操作をできるようにするほか、走行情報などのビッグデータ(大量データ)を駆使して車の故障可能性を事前に知らせるサービスなども始める。
昨年1月には米カリフォルニア州シリコンバレーに、人工知能(AI)研究・開発子会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」を新設。同年12月にはEVの企画・開発を担当する社内ベンチャー組織「EV事業企画室」を発足させた。
18年3月期は研究開発費1兆500億円と過去最大規模を計画する。豊田社長は「意志ある踊り場」「年輪的成長」と、将来に向けた基盤固めや着実に成長する会社の姿を表現してきた。巨大企業となり、以前のように大きく成長する局面ではなく足踏み状態。09年から始まった豊田社長体制において、今が最も難しい局面かもしれない。
日刊工業新聞2017年5月11日の記事を加筆・修正