RFIDタグ単価「1円以下」、実現のカギを握るのは印刷技術!?

富士通フロンテックが指摘する課題と可能性

RFIDタグの製品例
 富士通フロンテックは2016年度に無線識別(RFID)タグの出荷が前年度比約4倍になり、初めて1億枚を超えた。アパレル業界での利用がけん引役となった。RFIDタグは、人手不足問題の解消の手段として注目され、需要の増加が見込まれる。RFIDアンテナ設計・加工を手がけ、RFIDタグ技術に詳しい同社の業況を探った。

 「10年以上前にRFIDタグの販売を始めた時、1枚当たりの価格は100―200円だった」―。富士通フロンテックRFID事業部の落合孝直事業部長はこう振り返る。

 それが今や、数量次第では10円を切るまでコスト低減が進んだ。こうした状況を背景にアパレル業界での利用が進み、同社の出荷量を年1億枚まで押し上げた。

 一部の店舗では500円の靴下にもタグを付け、複数の商品の入った買い物カゴごと一括で会計する無人レジが始まっている。

 経済産業省は主要コンビニエンスストアに対し、25年にRFIDタグの導入を目指すプロジェクトを発表した。RFIDタグが省人化へ貢献する期待は一段と高まっている。

 コンビニは店舗数や商品数が多いため、効率化への効果はアパレルより大きくなる。ただプロジェクトでのタグの単価目標は1円以下で「かなり高い目標」(落合事業部長)だ。

 1円以下を実現するには、作り方を変える必要があるかもしれない。現在はアンテナに半導体チップを搭載してタグを作るが、チップもアンテナも同時に印刷で作成できれば劇的にコストが下がる可能性がある。

 いわゆる“プリンテッドエレクトロニクス”だ。「新しい方法(を採用する)か、現行技術で量産効果を引き出すか、17年中に方向性を考えたい」(同)という。

 アパレル業界ではタグの価格が10円程度でもコストを吸収できるが、その理由は使い方にある。会計の効率化だけでなく、棚おろしの効率化や盗難防止タグとして使われる。

 従来は、商品バーコードなどの情報を一つずつ読み取る「棚おろし」をして在庫を管理していた。だがRFIDタグは商品を棚に載せたまま、まとめて読み取れる。棚おろし時間が4分の1になった例もある。

 また製造直販型小売業(SPA)型のアパレルでは、製造段階でタグを付けられる。こうした総合的な効果が、タグ導入を後押しした。

 一方、コンビニはコスト以外の課題も多い。情報をやりとりする電波は水に吸収され、金属に反射される。つまり、缶ビールや表面が結露しやすい冷たい商品には、RFIDタグは利用しにくい。

 冷凍品の保管温度への対応も難しく、金属材料のため電子レンジで温められない。サプライチェーンも広いことから、コンビニは小売業の中でもタグの導入が最も難しい業態だろう。
(文=梶原洵子)

日刊工業新聞2017年6月8日

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まだ課題の方が目立つが、落合事業部長は「(課題が多いからこそ)コンビニ向け技術をドラッグストアなどへ展開することもできるのではないか」と話す。アパレルのように、物流やメーカーと連携すれば、製品ごとに業務を効率化する仕組みができるかもしれない。同社は難しい課題に挑戦することで、世界をリードする技術の開発を目指す。 (日刊工業新聞第一産業部・梶原洵子)

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