【ホンダ社長・八郷隆弘】僕の“三現主義”
コップの形は伝えられるが、中身の味は今でも伝えられない
「自前主義」「純血主義」―。ホンダはこう評されることが多いがそうは思わない。これまでもさまざまな企業との付き合いがあった。ただその世界は格段に広がっている。自動車業界に技術革新のパラダイムシフトが起きる中、外部と積極的に連携する必要がある。
イノベーションは、多彩な関係者がオープンな議論を重ね、ともに進むべき方向を考え、協業する中から生まれる。産業界では「協調領域・競争領域」といった言葉で、自社で手がける技術と他社と協業する技術を明確に選別する動きが広がる。ホンダも同じだ。
本田技術研究所(埼玉県和光市)も例外ではない。社長の松本(宜之氏)は「開国だ」と社内にはっぱをかけている。特に技術者は自らの研究は大切にしたいし、ややもすると同じ考えの人材が集まり特別な「村」を作ってしまう。
現場に戸惑いはあるかもしれない。だが、新風が吹き込むことで見えてくる世界があるはずだ。
2016年9月に東京・赤坂に人工知能(AI)をはじめ知能化研究の拠点「イノベーションラボ」を開設した。自動運転やコネクティビティ、ロボティックスなど最先端研究を強化し、顧客に「喜び」を提供する多様なモビリティの開発に取り組みたいと考えている。
開発力に磨きをかける原動力は、今も昔も変わらないホンダの企業風土、技術者魂と言っても過言ではない。「負けたくない」「まねしたくない」との思いが根底にある。
ただ、独自性を追求しすぎて独りよがりになってはいけない。消費者のニーズ、ライフスタイル、価値観が多様化する時代だからこそ現場に足を運び、市場の声に耳を傾ける努力を怠ってはならない。
机上の空論ではなく実際に「現場」に赴き「現物」を確認し「現実」を直視した上で問題解決を図る「三現主義」―。製造業に深く浸透するこの考え方の意味をかみしめている。
情報通信技術の進展によって、遠隔地でも現地の様子を確認し、物事を伝えられる。しかし本当に伝わっただろうか。コップの形は伝えられるが、中身の味は今でも伝えられない。市場で、あるいは現場で何が起きているか正確に把握できないことが最も怖い。
手にした人の喜びや楽しみ―。ホンダがこうした顧客の「感情」を事業の原動力にしている限り、現場重視の姿勢は決して見失ってはならない。
イノベーションは、多彩な関係者がオープンな議論を重ね、ともに進むべき方向を考え、協業する中から生まれる。産業界では「協調領域・競争領域」といった言葉で、自社で手がける技術と他社と協業する技術を明確に選別する動きが広がる。ホンダも同じだ。
本田技術研究所(埼玉県和光市)も例外ではない。社長の松本(宜之氏)は「開国だ」と社内にはっぱをかけている。特に技術者は自らの研究は大切にしたいし、ややもすると同じ考えの人材が集まり特別な「村」を作ってしまう。
現場に戸惑いはあるかもしれない。だが、新風が吹き込むことで見えてくる世界があるはずだ。
2016年9月に東京・赤坂に人工知能(AI)をはじめ知能化研究の拠点「イノベーションラボ」を開設した。自動運転やコネクティビティ、ロボティックスなど最先端研究を強化し、顧客に「喜び」を提供する多様なモビリティの開発に取り組みたいと考えている。
開発力に磨きをかける原動力は、今も昔も変わらないホンダの企業風土、技術者魂と言っても過言ではない。「負けたくない」「まねしたくない」との思いが根底にある。
ただ、独自性を追求しすぎて独りよがりになってはいけない。消費者のニーズ、ライフスタイル、価値観が多様化する時代だからこそ現場に足を運び、市場の声に耳を傾ける努力を怠ってはならない。
机上の空論ではなく実際に「現場」に赴き「現物」を確認し「現実」を直視した上で問題解決を図る「三現主義」―。製造業に深く浸透するこの考え方の意味をかみしめている。
情報通信技術の進展によって、遠隔地でも現地の様子を確認し、物事を伝えられる。しかし本当に伝わっただろうか。コップの形は伝えられるが、中身の味は今でも伝えられない。市場で、あるいは現場で何が起きているか正確に把握できないことが最も怖い。
手にした人の喜びや楽しみ―。ホンダがこうした顧客の「感情」を事業の原動力にしている限り、現場重視の姿勢は決して見失ってはならない。
日刊工業新聞2017年7月7日「広角より」