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泡盛じゃない、沖縄の地酒は「空港」で作られていた!

<連載>次に行くなら 沖縄 南大東島・ラム酒工場
泡盛じゃない、沖縄の地酒は「空港」で作られていた!

グレイス・ラムの本社工場。旧空港の建物や看板がそのまま残る

 47都道府県にある隠れた“名所”をご紹介。各地域の魅力を体験できる“次に行くべき”場所を紹介する。

元空港から飛び立つのは「ラム酒」


 「南大東空港」と掲げられた古い建物のドアを開けると、航空会社の看板があり「本当にここなのか」と一瞬ためらうが、漂う甘い香りで目的の場所と確信する。実はこの場所、20年前まで実際に空港だった。しかし今、ここから飛び立つのは蒸留酒・ラムだ。

 沖縄本島から東に約360キロメートル。南大東島でラム「コルコル」を製造販売するのがグレイス・ラム(沖縄県南大東村)だ。赤土から力強く伸びるサトウキビの畑の中にある本社工場は旧空港施設の再利用で、見学も可能。事務所は航空会社のカウンター、瓶詰めは待合室、醸造・蒸留・貯蔵は滑走路側に増設した工場で行う。

 2004年の設立から「3人だけ空港と間違えた」と玉那覇力工場長は笑う。沖縄といえば泡盛が有名だが、製糖の副産物・糖蜜を原材料に使うラムも“地酒”だ。サトウキビの搾り汁で造る世界的に希少な「アグリコール」も製造する。小さな工場だが「ここ1年で急に売れ行きが良くなった」そうだ。

 「離島の魅力は生活と文化の密着。多様な島の中から、きっと好みの島が見つかる」。沖縄観光コンベンションビューロー・渡辺翔さんのそんな言葉を思い出しながら、「ラムは島の酒さー」と自慢げな居酒屋店主に2杯目のラムを注文する。

(文=那覇・三苫能徳)

【アクセス】▽沖縄県南大東村旧東39の1、09802・2・4112▽那覇空港から南大東空港まで約1時間10分(直行便)、海路は那覇泊港から15時間(同)。空港から工場までは車で約10分。公共交通やタクシーはなく、レンタカーなどを利用する。工場見学は事前連絡が必要。

日刊工業新聞2017年7月7日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
沖縄には何度も足を運んでいる人も、那覇から1時間以上離れた南大東島を訪れたことがある人は少ないのでは。この連載では、各地の隠れた名所を支局記者が紹介します。

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