竹富島・熊本にみる「日本郵政」ユニバーサルサービスの原点

上場から1年、どうする薄利の郵便事業

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竹富郵便局の外観。赤瓦の屋根に乗ったシーサーと丸ポストが迎える
 沖縄県の竹富島。沖縄本島から南西に400キロメートル以上離れる。大きさは南北に約3キロメートル、東西に約2キロメートル。高さ10メートルほどの展望台に上れば島全体が見渡せる。集落内を観光客が水牛車やレンタサイクルで巡り、商店では店主の“おばぁ”が「暑いでしょ」とお茶を振る舞ってくれる。そんなのどかな島だ。信号も銀行もコンビニもない。だが郵便局はある。

 竹富郵便局は島のメインストリート沿いに建つ。石垣港からの定期船が着く竹富東港から一直線で1キロメートルほどの距離にある。1993年に島内で移転、局舎を新設した。平屋の赤瓦ぶきで屋根には魔よけ獅子のシーサー、周りは風よけの石垣が囲む、島の景観に合わせた設計で、局の前に立つポストは昔ながらの「丸」だ。

 石垣島から近いこともあり、竹富島の入域観光客は年間50万人にもなる。竹富局も観光スポットになっている。1日30人前後が訪れ、限定のフレーム切手を買っていく。8月は月200シート以上が売れた。利用者は観光客の方が多い。

 「タクシーが勝手にお客さんを連れてきてくれる」と笑うのは、15年4月に着任した辺土名(へんとな)孝局長。沖縄本島出身で離島赴任は初めて。局員2人との業務で局長も窓口に立つ。

 仕事は局内にとどまらない。郵便局長は土地の名士。赴任すると祝いの宴が催され、島の祭事では島民でも就けないような要職を任される。「島に溶け込まなければいけない。話には聞いていたが、実際に経験して驚いた」。

「小学校と郵便局がなくなると廃れる」


 島にとって郵便局は重要な社会インフラだ。「小学校と郵便局がなくなると廃れる」。島民はそんな存在として認識しているという。例えば竹富町は役場を石垣市内に置いており島内にない。住民票や印鑑証明は郵便局で発行される。行政の窓口なのだ。台風でも局を開ける。

 両替も快く受け付ける。民宿や食堂といった事業者は銀行がなく両替できない。そのため郵便局が受け持つ。局長判断で非公式にやっているのではない。離島局の業務の一つになっている。

 辺土名局長は「島の人のために何ができるか。答えはおのずと出てくる」と話す。「(局を置くことは)企業としては赤字だろうが、あって当たり前と思われている」。

 島の客と親しげに言葉を交わす。顔が分かり、家も家族構成も知っている。「かしこまらずフレンドリーに。銀行ではできなくても郵便局ならできる」。連綿と築かれた信頼がそれを可能にする。一方で「その信頼を崩さないようにしなければ」。

 サービスがユニバーサル(普遍的)である以上に、ニーズに応えるという単純なことが離島での「郵便局」ブランドを支えている。

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日刊工業新聞2016年11月17日/24日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

郵便事業への危機感は郵政グループ内で強い。売り上げが3兆円なら経費もほぼ同じという薄利。過去5年間の純利益の平均は日本郵便が300億円程度にとどまり、銀行や生命保険との差は大きい。郵便物は年2ー3%のペースで減少、構造改革は避けて通れない。三井住友銀行出身の横山社長がどこまで踏み込んだ手を打つかも注目されている。当然、残すべき郵便局は多くある中で、利益を安定的に生み出す体質を早く作らないといけない。

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