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マクドナルドが契約解除。「五輪スポンサー」という名誉と打算

マクドナルドが契約解除。「五輪スポンサー」という名誉と打算

マクドナルド公式ページより

国際オリンピック委員会(IOC)は16日、米マクドナルドと結んでいた最高位スポンサー「TOP」契約について、両者間で解除に合意したと発表した。IOCのルメ・マーケティング担当は「めまぐるしく変わる経済界で、マクドナルドはこれまでと違う優先順位でビジネスに集中することになったと理解している」と話した。

 同社は1976年から五輪のスポンサー契約を継続してきた。契約期間は2020年の東京五輪までだったが、3年前倒しでの終了となる。18年の平昌ピョンチャン五輪まで韓国国内でのみ五輪ブランドを活用できるという。

 1業種1社に絞って独占的権利が与えられるTOP契約は12社となり、IOCは、同社に代わる食品部門での新たなスポンサー獲得は現時点では予定していない。

日本企業それぞれの思惑とは?


 五輪公式スポンサーに日本企業が相次ぎ名乗りを上げている。トヨタ自動車など3社が東京オリンピックを含む2024年までの世界最高位の「TOPパートナー」として、国際オリンピック委員会(IOC)と契約を結んだ。NTTなど13社は、国内最高位の「ゴールドパートナー」の立場から、20年開催の東京オリンピック・パラリンピックを得意の製品・技術、サービスの側面から支援する。各社の思惑を探る。 
 

TOPパートナー企業


■トヨタ自動車/スポーツに恩返し
 「トヨタを育ててくれた社会と、私自身を育ててくれたスポーツに恩返しをしたい」。トヨタ自動車の豊田章男社長は、世界最高位のスポンサー「TOPパートナー」として五輪を支援する意義をこう強調する。

 1業種1社を原則とするTOPパートナーの中で、トヨタが担うのは新設のモビリティー分野。乗用車や商用車のほか、高度道路交通システム(ITS)、テレマティクスサービスなども対象製品に含まれる。

 トヨタの2015年3月期の連結営業利益は、好調な北米販売や円安が寄与し、前期比20・0%増の2兆7505億円と過去最高を記録。売上高営業利益率は初の10%に達した。3年間の工場新設凍結を解除し、メキシコと中国・広州の新工場の計画を発表するなど追い風に乗る。

 豊田社長は「五輪と同様に、自動車産業も安全性や環境負荷の点で持続可能性への挑戦を求められている」と指摘。TOPパートナーとしての活動の中間にあたる20年の東京五輪を「未来へのショーケース」(豊田社長)と位置付け、燃料電池車(FCV)をはじめとする最先端の技術をアピールしたい考えだ。
 
パナソニック/新社会システム開拓
 BツーB(企業間)事業の強化を進めるパナソニック。五輪最高位スポンサー契約を長年結んでおり、2016年までの契約を24年まで8年間の延長するタイミングでスポンサーカテゴリーを拡大した。従来のテレビや放送用などの音響・映像(AV)機器などに、選手村などに納入を目指す白物家電、渋滞対策で注目される電動自転車を加えた。BツーB事業関連では訪日客との交流を円滑にする多言語翻訳機や効率的な決済システム、監視システムなどのソリューション提案も始めた。

 20年の東京五輪関連需要で掲げる売上高目標は1500億円以上。大会で使うAV機器などの直接需要だけでなく、交通網・都市開発などの環境整備関連、自動車のIT化やエネルギー管理などの五輪を機に生まれる新しい社会システムなどの需要も開拓する方針だ。加えて、自社にない技術や知見を持つ企業との協業も積極的に行い、テレビや映像関連以外の幅広い五輪ビジネスに挑む。五輪担当役員は「他社と連携し、オールジャパンで取り組む」と意欲をみせる。
 
■ブリヂストン/世界へ不可欠な投資
 ブリヂストンは、毎年更新している5カ年中期経営計画で「業界において全てに『断トツ』を目指す」目標を掲げる。地域、性別、世代を問わずに高い認知度を持つ五輪を、主力製品のタイヤをはじめ免震ゴム、自転車などのブランド戦略で最大限に活用する。

 米タイヤビジネス誌の調査によると、2013年の世界のタイヤ市場に占めるブリヂストンのシェア(売上高ベース)は14・6%で、08年から続く世界首位の座を堅持。

 一方、新興メーカーの台頭により、仏ミシュラン、米グッドイヤーを含む上位3社のシェアは低下傾向にある。ブランドの認知度で優位を確保している国もある一方、2位以下のポジションにとどまる国も少なくない。

 津谷正明最高経営責任者(CEO)は「五輪の『より速く、より高く、より強く』というモットーは、我々が目指す企業像に通じる」と説明。「IOCとのパートナーシップは真のグローバル企業を目指す上で不可欠な投資」と強調する。
 

ゴールドパートナー企業


富士通NEC/ICTの力を結集
 情報通信技術(ICT)業界では富士通とNECがそれぞれ国内最高位の「ゴールドパートナー」となった。カテゴリーで分けると、富士通は「データセンター(DC)」、NECは生体認証や群衆などの異常な動きを検知する「パブリックセーフティー」と「ネットワーク製品」となった。ただ「通信サービス」ではNTTグループが名を連ね、ワールドワイドスポンサーには大会事務局のシステムなどを請け負う仏アトスもいて、それぞれの線引きは難しい。

 これに関して森喜朗2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長は「オールジャパン体制で五輪を成功させねばならない」と強調。すみわけが云々(うんぬん)ではなく、日本のICTの力を結集することを優先した。

 前回の英ロンドン五輪では本会場を新たに造成し、全体を囲って警備を固めた。東京五輪は人が大勢集まる商業施設などを含め生活空間で行われる。

 ロンドン大会よりも警備が大変。鈴木浩NEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部長は「生活者に極力負担をかけないような安心・安全の構築が必要だ」と語る。セキュリティー対策はまさにオールジャパンの真価が問われる。
 
■NTTグループ/サイバーテロ防ぐ
 NTTグループは国内最高位のスポンサー「ゴールドパートナー」契約の第1号となった。NTT、NTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモが通信サービス分野を担当。固定通信から移動体通信、無線でのサービス提供に加え、サイバー攻撃へのセキュリティー対策も強化する。

 「ロンドン大会最大の問題はサイバーテロだった。これをいかに防ぐかという視点で決めた」。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の森喜朗元首相は第1号にNTTを選んだ理由をこう説明した。

 NTTグループは大会運営を第一に産業界との協業を進め付加価値の高いサービスを提供していく。NTTの鵜浦博夫社長は「東京五輪を日本のレガシーとしてしっかり残していく」と意欲を燃やしている。
 
キヤノン/報道現場、側面支援
 キヤノンは五輪への協賛でブランドイメージの向上を図る。契約対象はスチルカメラとデスクトップ・プリンター。会場内に記者やカメラマン向けのサービスセンターを設置し、製品の貸し出しやカメラ・レンズのメンテナンスなどを行う。

 世界のトップ選手の一瞬を切り取るには、最高峰の技術と信頼性を持つカメラや機材を、常に最高の状態に保つことが不可欠。サービスノウハウの蓄積も期待できそうだ。同社は「カメラメーカーの責務として、メンテナンスサービスを通じて報道現場を側面支援する」としている。
 
■三井住友、みずほ/観光産業後押し
 三井住友フィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループの2社が国内最高位のゴールドパートナーに選ばれた背景には横並びを強烈に意識する金融業界ならではの水面下のさぐり合いがあった。メガバンク関係者は「1業種2社の場合、スポンサーシップの効果は少ない。

 企業側にも旨味はない。だが、他社が狙っている以上、引くに引けなかったのでは」と漏らす。「外れるくらいならば、共存する」というのが本音だろう。

 特に力が入ったのがみずほFG。64年の前回の東京五輪でオリンピック旗を保管した実績がある上、東京都の指定金融機関である自負心は強い。

 すでにプロジェクトチームを発足させており、施設建設やインフラ整備などの支援、観光産業の育成を後押しする体制を整える。今後の注目は選に漏れた格好になった三菱UFJフィナンシャル・グループの動向。2015年3月期の当期利益は1兆円を超え、世界最高位のトップパートナーを狙うのではとの観測も広まる。
2015年5月1日時点

※内容は当時のもの

日刊工業新聞2015年05月04日 最終面「深層断面」を一部修正



明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
商業主義のオリンピックが大きな曲がり角に来ているのは、企業のプロモーションの大変革と相関している。その象徴的な出来事。BツーBの企業も開催国にレガシーギフトを残すことができるか、検証しないといけない。大手の広告代理店とかも従来のビジネスモデルがますます通用しなくなっていく。

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