本田宗一郎や高柳健次郎が息づく大学、次なるイノベーション

静岡大学・石井潔学長に聞く「光技術、情報関連分野への期待は大きい」

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本田宗一郎氏(左)と高柳健次郎氏(高柳健次郎財団より)
 ―就任の抱負を。
 「多様性あるカラフルなキャンパスにしたい。静岡大学は静岡と浜松の両市の二つのキャンパスに6学部と大学院がある。これまでも学部間交流はあったが、今後さらに教員や学生が分野を超えて教育面や研究面で交流する必要がある。女性や外国人、障がい者も含め、領域を越えた相互交流の促進や教育の国際化、学びやすく働きやすい環境の整備に力を入れたい」

 ―カラフルなキャンパスをどう実現しますか。
 「アジアからの留学生を受け入れる『アジアブリッジプログラム』の実施で、すでに国際色豊かなキャンパスになりつつある。16年度に開始の地域人材養成を目指す『地域創造学環』は、複数の学部にまたがるプログラムで、専門分野の枠を超えた交流の場を提供できる。またグローバル人材育成のため、学部横断的に受講できる英語による教養プログラムも拡大する」

 ―静岡県には自動車関連をはじめとする製造業が集積します。
 「この恵まれた環境を生かし、産学連携も推進する。特に光技術の研究や教育では世界の先頭を走りたい。16年度採択の文部科学省の『地域イノベーション・エコシステム形成プログラム』、浜松市の『光都市宣言』に基づく光拠点体制の強化、浜松医科大学との協力による大学院設置が3本柱となる。浜松地区の大学や金融機関、企業と産学連携で光技術による産業創成を探りたい」

 ―車の自動運転や人工知能(AI)など次世代技術への対応は。
 「静岡キャンパスの『グリーン科学技術研究所』で低炭素循環型社会形成のための人材育成や研究を推進している。また新学科の『学部行動情報学科』では、ビッグデータ(大量データ)の分析や活用を研究している。地域企業からも光技術、情報関連分野への期待は大きい」

 ―学生へのメッセージを。
 「自分の狭い経験やアイデンティティーに閉じこもらず、広い視野で多様性を認め、受け入れてほしい」

 ―現在、関心を持っていることは。
 「専門は哲学で趣味は読書。劇作家で評論家の山崎正和さんの『文明としての教育』には国という枠組みにとらわれない文明と教育の関わりに共感した。静岡にゆかりの深い旧幕臣の文明開化への貢献にも関心がある」
石井潔氏

【略歴】いしい・きよし 85年(昭60)東大院人文科学研究科単位修得退学、同年静岡大教育学部助手、00年教授、10年副学長。岐阜県出身、61歳。4月1日就任。

日刊工業新聞2017年6月6日

COMMENT

全国の国立大学では中堅だが、アジア研究と光技術に定評がある。工学部の前身である浜松高等工業学校はテレビの父と呼ばれる高柳健次郎が「イ」の字を映しだし、ホンダ創業者の本田宗一郎が金属加工技術を磨いた。静岡キャンパスと浜松キャンパスによる文系と理系の交流、多様性のミックスでどんな新しい色が生まれるか。キラリと光る個性で存在感を発揮してほしい。 (日刊工業新聞浜松支局・田中弥生)

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