今ブームの「石皿」。硯職人なき硯メーカーを支えていた

 雄勝硯(おがつすずり)の素材として名高い雄勝石。1985年に通商産業大臣(現経済産業大臣)指定伝統的工芸品になったが、その歴史は室町時代までさかのぼると言われる。産地の宮城県石巻市雄勝町の硯工場は東日本大震災の津波で壊滅的な打撃を受けた。それから6年。「雄勝石皿」として生まれ変わり、感度が高い料理店やセレブたちの間で静かなブームを呼んでいる。

 雄勝石は2億年以上前の断層から採れる黒色硬質粘板岩。高級硯に使われるように、美しい漆黒の輝きと同時に、吸水性が低く化学的作用や長い年月にも耐えることが特徴だ。震災後、流された石材を回収。東京駅改修工事で屋根のスレート材に使われたことも記憶に新しい。

 「震災前は国産硯の9割を占めていましたが、まだ職人さんが避難しているため今は職員たちが作っている石皿が主力商品です」と、雄勝硯生産販売協同組合(宮城県石巻市、0225・57・2632)事務局長の千葉隆志さん。
 

 雄勝石の特性を活かし、新たな用途として協同組合と石巻市が開発した料理皿は黒光りする美しさに加え、保温・保冷にも優れるといった特徴も併せ持つ。刺し身やすき焼きの具材、オードブルの盛り付け皿のほか、天ぷらなど温かい料理のプレートとしても最適だ。

 東京・白金台の外苑西通りにある工芸ショップ『雨晴(あまはれ)』(東京都港区、03・3280・0766)。

 15年12月にオープンしたこの店には、流行に敏感な『シロガネーゼ』達が集う。同店をプロデュースする金子憲一さんは「飲食店からの引き合いのほか、近所に住む女性が買っていかれます。結婚式の引き出物としてご注文いただいたこともあります。震災から数年たったので、出荷が可能ならばと、雄勝硯組合さんにお声をかけさせてもらいました」と話す。

 ガラス張りのオシャレな店内には江戸切子や南部鉄瓶など全国の名産工芸品が並ぶ。その店頭を飾るのは雄勝石皿だ。

【メモ】雄勝石の歴史は古く、600年以上前から雄勝硯の素材として使われてきた。「石を見る」と書いて「硯」と読む。江戸時代の初めには牡鹿半島に鹿狩りに訪れた伊達政宗からいたく称賛され、褒美を授かったことが伝えられている。伊達家2代目の忠宗もその巧みな技法に感服。硯師を伊達藩に召し抱え、石の山を「お止め山」として一般人が採取することを禁じたという。

日刊工業新聞では毎週金曜日に「プレミアムクラフト」を連載中。日本各地に225品目ある伝統的工芸品。高くて日常で使えないイメージがあるが、実際に使ってみると、磨き抜かれた実用性の高さに驚く。数百円から購入でき、海外出張するビジネスマンや訪日外国人の手土産として改めて注目を集めている。デザイナーと連携した新ブランドの設立など、現代の多様な消費者ニーズに合った新たな動きも出てきた。

日刊工業新聞2017年5月26日

昆 梓紗

昆 梓紗
05月26日
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職員の方々のアイデアや熱意が伝わってきます。最近、石皿は「スレートボード」などと呼ばれおしゃれなテーブルウエアとして人気。量販店などでも売られるようになってきました。

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