ニュースイッチ

キリンの新商品が火付け役に。活気戻った「ノンアルビール」商戦の行方

アサヒ、サントリーの2強は巻き返しへ
キリンの新商品が火付け役に。活気戻った「ノンアルビール」商戦の行方

ビールに近い味わいが受け、販売好調な「キリン零ICHI」

 “アルコールゼロ”が売りのビール風味飲料(ノンアルビール)市場が、久々に活気づいている。きっかけは、キリンビールが4月11日に発売した戦略新商品「キリン零ICHI(ゼロイチ)」。ビールに近い味わいが消費者に受けて、序盤の売れ行きは会社側の予測を超える好調ぶり。ライバルのアサヒビールも販売促進強化などの対抗策が功を奏し、「『ドライゼロ』の売り上げは落ちていない」という。競合の攻勢を受け苦戦するサントリービールは、「オールフリー」の中身を刷新して巻き返す。

 「小売店のPOS(販売時点情報管理)データでも、ゼロイチはトップにランクインした」。キリンビールの布施孝之社長は、手応えをこう強調する。ゼロイチは主力ビール「一番搾り」と同様、「一番搾り製法」を採用し、味わいをビールに近づけた。5月に入っても「勢いは衰えていない」。

 もともとキリンは、ノンアルビールのパイオニア。2009年に業界のトップを切って「キリンフリー」を発売した。ドライバーが安心して飲める「ビールテイスト飲料」と発売直後は存在感を示したが、サントリービールとアサヒビールがより風味を向上させた商品で参入してくると勢いが失速。シェアは3位に後退した。中身刷新や、機能性商品を発売したりしたものの、再浮上できない状態が続いていた。

 業界トップは、アサヒとサントリーの2強争い。アサヒは「ドライゼロ」の中身を16年に刷新して攻勢をかけ、同年の販売数量は前年比ほぼ2ケタ増。17年1―3月も伸びが続いた。4月はキリンのゼロイチ投入で影響が心配されたが、大々的なサンプリングや高速道路サービスエリアを使ったイベントなどで露出を拡大。同月も前年比5・7%増と伸びを保った。

 サントリーは2社の攻勢に対し、同年1―4月で約7%減と影響を受けた。オールフリーの仕込み工程を見直すなど、中身を刷新し巻き返す。「需要が伸びる夏場からが本当の勝負」(サントリー)と気を引き締める。料飲店やスーパーの店頭を中心に、氷でしっかり冷やして飲む楽しみ方をアピールし販売増を狙う。

 ノンアルコール商品はビール味以外にチューハイ風味もあり「スーパー店頭で生き残れるビール味商品は2品種」(業界関係者)との見方が多い。棚面積の狭いコンビニエンスストアは、なおさら競争が激しい。現状、ドライゼロとオールフリーが大半の店舗に入っている状態で、キリンがゼロイチをテコに定着できるかが焦点だ。
日刊工業新聞2017年5月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
アサヒ、サントリーとも4月のキリンの好調を認めたうえで、「店頭に定着できるかは今後の売れ行き次第」と、口をそろえる。熱い戦いは続く。 (日刊工業新聞第ニ産業部・嶋田歩)

編集部のおすすめ