名糖産業が愛知・瀬戸にチョコレートの主力工場、OEMも拡大へ
なぜ国内で食品工場の新設が相次いでいるのか
ターゲットは「お一人さま」
例えば、高齢化や少子化は、簡便に調理できる需要の高まりや1人世帯の増加につながる。1人分の米飯をたくのは面倒だが、調理パンやパックごはんを買えば苦にならない。即席カップめんも同じだ。コンビニエンスストアやスーパーでは、一人前のカップサラダや総菜の売り上げが伸びている。
ケンコーマヨネーズは「ホテルや旅館の調理人不足で、厚焼き卵の需要が伸びている」と話す。テーブルマークは冷凍うどんの最近5年間の平均伸び率が、1ケタ台後半だと明かす。日清食品は、高齢者や女性を狙った即席カップめんが、売り上げを伸ばした。
冷凍食品業界では16年、チャーハンやギョーザなどが売り上げを伸ばした。味の素冷凍食品が15年に戦略新商品の「ザ☆チャーハン」を発売。ニチレイフーズも主力工場に、30億円強を投資した。
高温熱風を米飯にまとわせてパラパラ感を向上するなどでおいしさを改善した結果、従来の客層以外からも消費者を呼び込み、市場全体が拡大。味の素冷凍食品は16年のチャーハン市場が、15年比36%増になったと分析している。おいしさという食品本来の競争力で工夫ができれば、少子高齢化といった市場環境の変化があっても売り上げは伸びることが分かる。
ヨーグルト市場も、伸びが続く。森永乳業は総額282億円を投じて、利根工場(茨城県常総市)の新棟建設と、神戸工場(神戸市灘区)の新ライン建設を決めた。明治や雪印メグミルクなどの競合大手が工場能力をすでに増強、あるいは増強を進める中での大型投資。
森永乳業の増産投資は後手に回った格好だが「家庭用ヨーグルト市場はまだ伸びが続く。特にドリンクヨーグルト商品は期待できる」(大貫陽一取締役)と強気だ。
容器差別化で潜在需要喚起
食品容器の差別化も、潜在的な需要を掘り起こす。キッコーマンや日清オイリオグループの“鮮度が保てる容器”を採用した商品も、販売増を後押しする。
日清製粉は卓上ペットボトル容器の家庭用小麦粉「クッキングフラワー」の品ぞろえを増やしている。明治はキャップ付き容器の「明治おいしい牛乳」の販売エリアを、九州から西日本地区へ拡大するため、愛知工場(愛知県稲沢市)と九州工場(福岡 県八女市)に総額20億円で、新生産ラインの投資を行う。
「成熟した」と言われる国内食品市場も、工夫や着想次第でまだ伸びが見込めそうだ。和食ブームや安全安心意識の高まりを背景とした国産志向、為替の円安による輸入品高といった追い風もある。海外強化と並ぶ国内強化の流れは、しばらく続きそうだ。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2017年1月4日