注目の不動産業界、大手の業績はオフィス賃料上昇で今期も追い風

企業の採用増による移転・増床ニーズ拡大

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東京・丸の内
 日本郵政が野村不動産ホールディングスの買収を検討していることが明らかになり、俄然注目され始めた不動産業界。今、不動産市場に追い風が吹いている。企業の採用増による移転・増床ニーズの拡大などを背景に、オフィス賃料の上昇基調が継続。不動産大手5社の2018年3月期は三井不動産、三菱地所、住友不動産が売上高と営業利益段階から最高を更新する見通し。新築マンションは供給が減少傾向にあるが大手各社の販売は堅調で、寡占化が進んでいる。

 三井不動産は既存オフィスの賃料上昇が続いている。18年3月期は大型ビル「(仮称)新日比谷プロジェクト」の新規稼働で償却負担は増えるがテナント誘致は好調で、「完成時はフル稼働に近い状況」(佐藤雅敏取締役常務執行役員)を見込む。分譲マンションは首都圏郊外で在庫の増加があったが「全般的には好調だ」(同)。

 三菱地所は新規ビルの通期稼働もあり、オフィス賃貸収入が好調に伸びている。18年3月期の全国全用途の平均空室率は3・0%と低水準が続く見通し。平均賃料は前期比微増を見込むが「足元も値上げが進んでいる」(片山浩取締役執行役常務)状況で、想定を上回る可能性が高い。

 住友不動産はマンション販売の好調が際立つ。17年3月期のマンション契約戸数は、前期比17・1%増の6467戸と最高を更新した。「価格上昇も受け入れられており、販売は非常に堅調」(尾台賀幸取締役)。崩れる気配はないと見る。

 東急不動産ホールディングスのマンション販売は、東京都心部の高額物件が好調。17年3月期はビル売却収入の減少が響いたが、18年3月期は売上高と当期益で最高を見込む。

 渦中の野村不動産ホールディングスは大手の中で唯一、18年3月期は減益予想。マンション売り上げ計上戸数を前期比10・5%増の5400戸と想定。「新規発売はユーザーが受け入れる価格で出す」(木村博行取締役)とし、利益率を抑えても販売を増やす戦略だ。
              

日本郵政社長「リスクは承知。聖域なく検討したい」


 日本郵政が15日発表した2017年3月期連結決算は、傘下の日本郵便が15年に約6200億円で買収した豪物流大手トール・ホールディングスの「のれん」代など計4003億円の一括減損処理で、当期損益が289億円の赤字に転落した。民営化後初の赤字となるが、18年3月期は当期利益4000億円を見込む。

 日本郵政は今決算で約3200億円の最終利益を見込んでいた。しかし、トールの業績が低迷。「のれん」償却負担が100%子会社の日本郵便に毎年200億円以上のしかかる危機的事態に陥っていた。 

 同日会見した長門正貢日本郵政社長は「負の遺産を一掃する」としたが、減損の一括償却で日本郵便の赤字額は3852億円に達した。郵便物の減少や人件費高など逆風が続くが、6月の切手やはがきの値上げで約300億円の増益を見込み、18年3月期は130億円の黒字転換を目指す。

 政府は日本郵政株の第2次売却に向けて3月に主幹事証券会社を決め、年内の株放出を急ぐ考え。ただ、将来的な成長は見込めず、野村不動産ホールディングス(HD)のM&A(合併・買収)関連報道について、長門社長は「不動産事業のリスクは承知しているが、成長が見込めるならば聖域なく検討したい」と述べた。また、同日開いたかんぽ生命保険の指名委員会で同社の新社長に植平光彦専務執行役を内定。6月21日の株主総会後の取締役会で正式に就任し、石井雅実社長は退任する。
会見する日本郵政の長門社長

日刊工業新聞2017年5月15日/16日の記事を再編集

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

大手不動産会社の中堅社員と話すと危機感が強い。単なる場所貸しのビジネスモデルはいずれ通用しなくなると。入居者などへ新たなサービスを提供できるか。大手の2強ではいえば、三菱地所はそのあたりは依然保守的。三井不動産の方が新しいことにチャレンジしようとしている印象。日本郵政がもし野村を買収しても、そのようなセンスや感覚は…。

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