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政治に翻弄 「日本郵政」歴代4人の社長が選ばれた理由

西室現社長は体調不良で退任へ。次は?
政治に翻弄 「日本郵政」歴代4人の社長が選ばれた理由

西室泰三社長(左)と次期社長候補に浮上している長門正貢ゆうちょ銀行社長

「官から民へ」。2005年8月、小泉純一郎首相が郵政解散を断行。翌月の総選挙で自民党が圧勝し、郵政民営化法が成立した。しかし、民主・社民・国民新党連立政権下での株式売却凍結、第2次安倍政権発足での上場決定―とジェットコースターのように政治に翻弄されてきた。 

「ラストバンカー」は小沢・亀井ラインで降板


 07年10月、国有民営会社である日本郵政が発足。元三井住友銀行頭取の西川善文が初代社長に就く。「ラストバンカー」の異名をとる西川は「国債中心の資金運用から新しい運用モデルの構築」を掲げ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険を10年度には上場させる腹づもりだった。

 しかし09年9月、全国郵便局長会(全特)の支持を受け郵政見直しを「一丁目一番地」に掲げる国民新党が民主連立政権に参加する。亀井静香国民新党代表が金融・郵政改革担当相に就任。西川は翌月辞任に追い込まれる。

 後任社長に亀井と民主党幹事長だった小沢一郎の後ろ盾に「10年に一人の大物次官」といわれた斎藤次郎が就任する。民主・国民新両党はゆうちょ銀、かんぽ生命の上場をストップさせた。

 11年3月、東日本大震災が起こる。民主党政権は復興財源として日本郵政上場を決断するが、12年4月に自民、公明との3党合意で成立した改正民営化法で「17年9月までに金融2社を完全民営化する」とした従来方針を「努力規定」に修正。株式の処分期限も撤廃し、小泉・竹中路線からの決別を図った。

自民政権返り咲き、「10年に一人の大物次官」もあっけなく去る


 しかし、この年の暮れの自民の政権返り咲きでまた潮目が変わる。斎藤は翌夏の取締役会を待たずに臨時取締役会を開き突然辞任、後任社長に大蔵省の後輩の坂篤郎副社長を指名する。総選挙での自民党の圧勝を受け、「切られる前に自ら辞める」という決断だった。

 坂はかつて第1次安倍内閣で官房副長官補として仕え、安倍総理とのパイプは太かった。しかし、総務相時代に西川社長とともに郵政改革を推進、改正民営化法の採決で反対票を投じた菅義偉官房長官が激怒。わずか半年で辞任に追い込まれ、郵政民営化委員会委員長に就いていた西室泰三が4代目の社長に就く。

 「政治が介入しなければならないような経営は私の代で終わりにしたい」。しかし今年7月の参院選をにらんで自民党の限度額の見直し論議も進む。「集票マシン」全特は新たな組織内候補を擁立。40万人の巨大組織は、上場後も政治に翻弄される運命にある。
(敬称略)

※日刊工業新聞では毎週水曜日に「郵政上場の衝撃」を連載中
日刊工業新聞2015年11月25日金融面の記事を一部修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
西室さんの後任にはゆうちょ銀行の長門社長で調整が進んでいると言われている。文中で、西室氏が「政治が介入しなければならないような経営は私の代で終わりにしたい」と語っているが、簡単にガバナンスは変わることはないだろう。西室氏の古巣である東芝もガバナンスが問われ、構造改革に一区切りつけ今年春にも室町社長が退任する可能性もある。日本には外部から招聘できる「経営者のプロ」という仕組みも文化もない。これまではそれを財界が担ってきたが、経団連をはじめ今の財界にも人材が不足している。

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