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病変を捉えろ!キヤノンやカシオがデジカメ技術とAIで診断支援

病変を捉えろ!キヤノンやカシオがデジカメ技術とAIで診断支援

同じメラノーマでも個人差があり判別は難しい

 キヤノンカシオ計算機などはデジタルカメラで培った技術を活用し、医療用の診断支援システムを開発する。画像解析技術と人工知能(AI)を活用して患者の病変をとらえ、医師の診断を助ける。AIによって、画像活用が診断に近い領域へ広がる可能性が出てきた。実用化には関連法に基づく承認が必要だが、各社は成長分野の医療機器で自社技術の用途拡大を狙う。

 キヤノンは京都大学との共同研究成果を生かし、画像診断支援ソフトウエアの実用化を目指している。診断支援の対象として、がんや神経性疾患を研究している。

 例えば、パーキンソン病は、脳のどの部位がどう変化するかで、鑑別が異なり、有効な治療法も異なる。米ジョンズ・ホプキンス大学の技術指導を受けて、目視では難しい変化を、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)画像の解析によって捉えることを目指す。

 カシオ計算機は信州大学と共同で、皮膚疾患の診断支援システムを開発する。皮膚の色素変化の画像から色やメラニン分布などを見つけ出し、ほくろか、悪性黒色腫(メラノーマ)などの病変かの鑑別を支援する。

 現在は医師が診断しているが、技能の習熟が必要。全員が同じように診断するのは難しい。特に初期のメラノーマは判別が難しい上、短期間で悪化する。

 同システムは皮膚疾患の自動判別の国際コンテストで1位となり、企業や大学から問い合わせが増えた。共同研究先の拡充も検討する。

 富士フイルムも画像認識・解析技術を診断画像に応用、医師の診断を支援する技術を提供している。画像解析による医療用の診断支援システムの開発は、AIの進化が後押ししている。AIは、目視ではわかりにくい画像の変化・違いを捉えることができ、診断精度を高められると期待されている。
日刊工業新聞2017年5月5日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
医師は限られた時間で多くの画像データをさばき、病気かどうかの判断も医師の技量に左右される面も多いそうだ。診療科別で医師が不足していたり、地域によっても医師がいる、いないなど偏在が課題となる中、AIで病変の“ふるい分け”が出来れば、診断精度の向上や見逃しの低減などが期待できる。

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