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5年で1.5倍に成長した日本の医療機器産業

総売上高は5ー6兆円、国内外ともに成長続く
5年で1.5倍に成長した日本の医療機器産業

キヤノンは東芝メディカルの買収で、新たな収益の柱に(東芝メディカル本社工場)

 日本医療機器産業連合会(医機連)がまとめた医療機器産業の成長性に関する調査によると、医療機器関連企業(日本企業49社)の2015年度売上高は10年度比51・2%増の4兆9000億円となった。日本企業の総売上高は5兆―6兆円とみられ、うち海外売上高は3兆円と推計した。国内外ともに成長しており、特に海外の伸びがけん引している。

 医機連傘下の調査研究機関である医療機器政策調査研究所(MDPRO、原澤栄志所長=医機連専務理事)がまとめた。

 日本企業49社のうち、地域別売上高を公表する26社では国内売上高が年率4・4%増に対し、海外売上高は同15・9%増と2ケタ伸び、15年度の海外売上高比率も10年度の50%から63%に高まった。

M&A加速、海外展開や提案力欠かせず


 医療機器業界でM&A(合併・買収)の動きが活発化している。高齢化の進展や新興国などの需要の高まりで、世界市場は拡大傾向が続く。成長を模索して得意分野の強化や事業を選別する動きが本格化していきそうだ。

 今年、業界で最も大きな出来事といえばキヤノン東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)の買収だろう。富士フイルムホールディングスやコニカミノルタなども名乗りを上げ、最終的に買収額が約6655億円に膨れ上がった。

 キヤノンはコンピューター断層撮影装置(CT)国内首位の東芝メディカルを傘下に収め、医療分野をカメラや複合機に次ぐ、新たな収益の柱にするのが狙いだ。現在、承認手続き中で、手続き完了後に事業戦略をどう描くかが注目される。

 ただ国内で東芝メディカルのような大型案件は限られているようだ。むしろ“ピンポイント”に得意分野を強化する動きが目立つ。

 テルモは10月、海外の競合企業から血管内治療事業の一部を買収することで基本合意した。今年、脳動脈瘤(りゅう)治療用の塞栓(そくせん)器具を手がける企業も買収しており、成長領域の心臓血管領域を拡充し、成長を加速する。

 また、日立製作所三菱重工業のX線治療装置事業を買収した。三菱重工の顧客基盤を取得し、日立が得意とする粒子線治療システム事業とともに放射線治療領域を強化する。フクダ電子はオムロンヘルスケア(京都府向日市)子会社で院内医療機器事業を手がけるオムロンコーリン(東京都文京区)を買収した。高付加価値の院内システムを提供する。

 医療機器は世界的には成長市場だが、国内に目を向けると国の医療費抑制や需要先である医療機関の再編など事業環境は安泰と言えない。国内市場が中心の中堅・中小メーカーも多い。今後、海外への展開力や製品・サービスを組み合わせた提案力などが求められる中、再編の足音は大きくなりそうだ。
(文=村上毅)

日刊工業新聞2016年12月1日/8日

日刊工業新聞記者
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医療機器分野は内外需ともに拡大が期待される数少ない分野です。人命に最大限配慮しつつも、民間の活動を後押しする規制改革など、政策的な支援を手厚くするべきではないでしょうか。

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