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患者と医師、「質の高い医療」へのギャップに解決策は?

一般化された確たる物差しがない。まず信頼する医師選びから
 皆さんは質の高い医療にどのようなイメージをお持ちですか。日常的な風邪や血圧の治療ならば近くの医院で迅速に診てもらえ、的確、適正な治療がなされることではないでしょうか。

 では、がんの場合は?近くでなくても迅速・的確な判断、適切な治療を求めると思います。脳卒中や心筋梗塞(こうそく)の場合は?時間との勝負です!できるだけ近い病院で迅速、的確、適切な治療を求めるでしょう。

 いずれの疾患も跡形なく治癒すれば問題とはなりません。しかし、重篤な後遺症となる場合や最悪、亡くなることもあります。迅速かどうかは、近くに病院があったか、早く発見されたかという時間的な問題だと思います。

 問題は的確な判断がされたか、適切な治療だったか、という場面です。医師と皆さんでは、当たり前ですが知識に圧倒的な差があります。

 医師や看護師が話す内容が本当か、うそなのか分からないと思います。ましてや重度な障害が残ったり、亡くなってからあれこれ言われたのでは、医療事故ではないかと疑ったりもすると思います。このように疑われるようでは質が高い医療とはいえません。

 では、どうすれば良いでしょうか?

 まず検査や治療の都度、詳しい説明を受けることが重要です。医療者は難しい言葉で、難解な説明をするように思われますが、自分で納得できるまで何度でも質問することが大切です。

 とはいえ重傷者を抱えた医師は時間がなく説明してもらえないことがあるかもしれません。

 もう一つの方法は、信頼を置ける医師を見つけておくことでしょう。信頼できる医師に説明を聞いてもらい、その医師から説明を受けることです。

 そうすれば緊張もなく、自由に質問できます。医療を受ける皆さんに医療を理解してもらえれば、医療への満足度が高くなり、「質の高い医療を提供している」と言ってよいと考えています。

 もう少し進めて考えると、この医療を提供したときにどのようになるのかを図や写真とともに、副作用や障害を含めて、さまざまな事象を説明できる、全国的に一般化された物差しがあれば、説明も分かりやすくなり、信頼性も増すと思います。

 ところが、現状ではパス(最良の医療効果をあげるため医療の標準化を目指したもの)というものはありますが、確たる物差しは存在していません。医療は複雑で、非常に難しいものですが、丁寧な説明と患者さんの納得を得ながら進める医療を「質が高い」と考えています。
(文=進藤晃・医療法人財団利定会大久野病院理事長)

日刊工業新聞2017年5月5日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
「質の高い医療」とは、患者に適切で、患者自身も納得ができる医療のことだろう。患者が信頼し、治療に前向きに取り組む意識が、その後の治療効果を高めそうだ。

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