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中小の早期事業承継にインセンティブ。企業庁が上限で500万円

迫る団塊世代経営者の大量引退時期、黒字廃業を減らす
 経済産業省・中小企業庁は、中小企業の早期の事業承継にインセンティブを与える。事業承継に絞った補助金を新設し、5月上旬に公募を始める。事業承継を契機に、不採算事業からの撤退や生産ラインの撤廃など事業・業態転換にかかる費用も対象となる。補助上限額は500万円で、補助率は3分の2。団塊世代経営者の大量引退時期が迫る中、計画的な事業承継を促し、後継者不足による黒字廃業を減らす。

 企業の後継者が、ビジネスモデル転換による市場創出や新市場開拓、製造ラインのIT化、顧客管理システム刷新といった経営革新を実行する場合、最大200万円を補助。事業所廃止や工場再編、非中核事業からの撤退などを伴う場合、廃業費用として300万円をさらに上乗せする。

 廃業費用がネックで事業承継が進まない、後継者選びに時間がかかるなど事業承継に関する課題は多い。例えば業績が低迷した老舗鮮魚店が今回の事業承継補助金を活用し、後継経営者が先代から引き継いだ仕入れルートを生かし創作料理店に業態変更するといった使い方が想定される。

 2015年4月1日から17年12月末までに代表者が交代した中小企業が対象。後継の経営者は、引き抜きなど親族外からの就任、親族内の承継ともに対象とするが、経営に関して一定程度の知識や経験を持っていることが要件となる。M&A(合併・買収)で事業を譲渡するケースも対象とする。中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う「認定経営革新等支援機関」に相談して採択された企業には、補助事業に関して報告する必要がある。
               

ファシリテーター・安東泰志氏


 最近はPEファンドに持ち込まれる案件のかなりの割合が事業承継に伴うものだ。事業承継に伴う事業構造転換に補助金を出すのも良いが、それ以前に、受け皿となる独立系のPEを育成する政策が必要なのではないか。
日刊工業新聞科学2017年4月27日
櫻井八重
櫻井八重 Sakurai Yae
団塊世代の引退時期が迫る中、中小企業の事業承継問題は非常に切実だ。昨年帝国データバンクが発表したリサーチ結果によると、国内企業の3分の2にあたる66.1%が後継者不在と回答している。当社へのヘッドハンティングの相談も増えてはいるが、上記の数字と肌感覚が合わないのは、そういう選択肢なく、事業の売却や廃業を選択を余儀なくされる企業が多く存在するからだろう。補助金の額が妥当がどうかはわからないが、この制度が優良企業を守る救世主となることを切に祈ります。

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