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迫る中小経営者の大量引退時代。廃業ラッシュは食い止められるか

2020年ごろには団塊世代が一斉にリタイア、遅れる後継者の確保
 2020年にかけて中小企業経営者の大量引退時代を迎える。経営者の高齢化が進む一方、後継者の育成、確保は遅れている。事業承継は、今後しばらく多くの中小企業にのしかかってくる重いテーマだ。

 背景にあるのは経営者の高齢化。中小企業経営者の年齢分布をみると、95年に47歳だったピーク年齢が15年には66歳へ移動した。20年ごろには団塊世代の経営者が大量に引退時期を迎えるだけに、後継者問題に早急に向き合う必要がある。

 一方で、後継者の確保や育成は遅々として進んでいない。日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、60歳以上の経営者のうち、50%以上が廃業を予定。

 中でも個人事業者の約70%が「自分の代で事業をやめるつもり」と回答している。また廃業予定企業のうち約30%が後継者難を理由としている。

 廃業が増えた場合の影響は計り知れない。世代交代に伴う事業の変革と活性化が期待できないほか、雇用を維持できないことで長年培ってきた技術やノウハウが失われてしまう可能性がある。

 こうした状況を食い止めるため、中小企業庁は16年12月に「事業承継ガイドライン」を10年ぶりに改訂した。柱の一つが、60歳以上の経営者を対象に、承継の準備状況を調べるツール「事業承継診断」の導入。商工会議所や金融機関などの支援機関が顧客企業を訪問し、ニーズを掘り起こす取り組みだ。

 診断表に基づく対話を通じて早い段階での計画的な取り組みを意識するよう経営者に促し、事業承継を円滑にする効果を狙っている。
(文=古谷一樹)
           
日刊工業新聞2017年1月1日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分の実家は石川県の小松で家業をしている(製造業ではないが)。これまでは東京でずっと記者生活をしてきて一切継ぐつもりはなかったが、4~5年前から何とかお店は存続できないか、と考えるようになっている(自分が後を継ぐかは別として)。幸い、70代前半の父はまだ現役。なぜそう思うようになったかといえば、やはり父母が背負ってきたものを、自分も年齢を重ねるごとにより深く感じるようになったからだ。もちろん親族外承継など多様な選択肢があっていい。それでも理想は親子リレーだと思うのだ。その場合、子どもがいないと話にならない。根底にある少子化問題は避けて通れない。「働き方改革」も悪くはないが、政府は少子化対策と地方創生に魂を入れないといけない。

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