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カードの決済データ、フィンテック企業の収集容易に

経産省が指針。イノベーションのインパクトは?
カードの決済データ、フィンテック企業の収集容易に

消費者の利便性向上につながる多様な新サービス創出が期待される(イメージ)

 経済産業省はクレジットカード各社にAPI(応用プログラムインターフェース)の公開(オープンAPI)を促すガイドラインを策定する方針を固めた。フィンテック(金融とITの融合)企業がカード会社の決済データなどにアクセスしやすくなり、消費者の利便性向上につながる多様な新サービス創出につながる見通し。すでに金融庁がオープンAPIを実質義務化する銀行法改正案を国会に提出しており、日本でのフィンテックの普及が加速する。

 ガイドラインの策定を見据え、経産省は31日に「クレジットカードデータ活用に係るAPI連携に関する検討会」を開き、API連携で創出されるサービスや収益・費用分担などのあり方を議論する。5月にも中間報告書を策定する予定だ。

 消費者は自らの消費情報を自動的に収集、管理できれば家計管理や貯蓄が容易になる。マネーフォワード(東京都港区)をはじめ大手家計簿サービス企業の会員数が合計1000万人を超えるなど、こうしたニーズは多い。

 カード会社にとっても、金利収入や加盟店手数料収入が伸び悩む中、保有データを開示することでサービス向上につながり、複数のポイント情報を統合した新たな事業などが想定される。

 課題はデータ保護やセキュリティーだ。決済や資産管理などのフィンテック企業とAPI連携するとこれらの事業者が消費者の銀行口座やカードアカウントにアクセスする。セキュリティーが不十分な事業者と連携した結果、情報漏えいなどのリスクに直面する恐れがある。

 経産省はセキュリティー基準を策定し、それを満たしたフィンテック企業にAPI連携を認めることを検討する。2017年度内にガイドラインをまとめ、18年度から運用を始める意向だ。
日刊工業新聞2017年3月31日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
家計簿サービスは確かにフィンテックの一分野ではあるが、イノベーションの度合いとしてはインパクトに欠ける。API連携をするなら、本当は、異なる銀行・証券・カード会社等を跨いだアカウント・アグリゲーションによって、消費者が自分の資産負債管理を一元的に行えるくらいのメリットが欲しい。今はまだ同一金融機関グループ内でさえ、それが出来ているところは少ない。もちろん、セキュリティー問題が解決出来ることが大前提だ。

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