半導体メモリー・WHなき「新生・東芝」は生き残れるか

リスクを遮断、社会インフラ軸に4兆円で再スタート

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苦渋の表情で会見する綱川社長
 東芝が海外原子力発電事業からの撤退を決めた。米子会社ウエスチングハウス(WH)が29日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。これに伴い2017年3月期の東芝の当期赤字は、日本の製造業で過去最大の1兆円超に膨らむ公算が大きい。一方、WHは連結子会社から外れ、東芝は米国を中心とする海外原発プロジェクトの損失リスクを遮断できる。足を引っ張ってきたWHと決別し経営再建を確実に進める。

 会見した綱川智東芝社長はWHの非連結化について「経営健全化の第一歩。一時的に損失が発生するが、海外原発事業のリスクを遮断できる」と意義を強調した。

 WHの非連結化により、東芝はWHに対する約6500億円規模の親会社保証の引当金、債権1756億円の貸倒引当金を全額計上する見通し。これらの損失で東芝の17年3月期の当期損益は1兆100億円の赤字となり、同期末に6200億円の債務超過に陥る公算が大きい。2月14日の予想では当期損益は3900億円の赤字、1500億円の債務超過としていた。

 東芝の経営危機の要因となったWHの米原発プロジェクトは工事が難航しており、今後もコストが膨らむ懸念が指摘されていた。WHの非連結化と親会社保証の履行により「今後のリスクはなくなった」(綱川社長)と強調した。

 今後は東芝が半導体メモリー事業を分社して4月1日付で発足する「東芝メモリ」の売却の行方が焦点。綱川社長は「2兆円の企業価値はある。(その売却で)17年度中に確実に(株主資本を)プラスにもっていける」と説明した。

 売上高を5兆5000億円規模から4兆円規模に縮小し、社会インフラを主とする会社として再生を図る戦略を打ち出す。

「上場廃止になっても抜本的に出直す方がいい」(同社幹部)


                  

 「メモリーや原子力のように1兆円規模の事業はないが、3000億、5000億円の事業を着実に進める」(綱川社長)。先日発表した17―19年度までの中期経営計画では、従来の経営方針からの転換を明確に宣言。海外原発と半導体メモリー事業を売却すれば、全社の売上高は約3割減少する。しかし“新生東芝”では事業規模ではなく、確実に収益を出せる体制にこだわる。度重なる経営危機からの脱却は、17年度の構造改革の行方に委ねられる。

 “新生東芝”の核となるのは公共インフラ、ビル・施設、鉄道・産業システム、リテール&プリンティング事業を抱える、社会インフラ領域だ。合計の売り上げ規模は1兆7000億円を超え、19年度には16年度比11%増の1兆9650億円に成長することを目指す。

 東芝が志向するのは18年度からの安定成長だ。綱川社長は「17年度中にリスク遮断、財務基盤の回復、組織運営の強化の三つを確実に実行し、収益基盤の強化につなげる」とする。従来の柱であった原発事業は連結から外すことで、リスクを最小化。もう一つの柱であるメモリーは、事業売却により将来の経営資源の糧とする。

 抜本改革のもう一つの柱が、各事業の分社化だ。自立した機動的な事業組織を作り、ガバナンス強化や事業価値の最大化を図るのが狙い。事業持ち株会社のような形態を想定しており、綱川社長は「17年度中にはやりたい」とする。

 同社幹部からは「従業員の雇用さえ守れれば、上場廃止になっても抜本的に出直す方がいいのでは」との声も聞かれる。困難な課題が山積する中、果たして東芝は新たな道を踏みだせるのか。その見通しはまだ立たない。

日刊工業新聞2017年3月30日の記事に加筆

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括

2000年代前半までメモリー事業はここまで大きくなかったし、WHもなかった。パソコンも白物家電などのコンシューマもいずれは収益的に厳しくなることは想定された。西田元社長の就任が2005年。ひとまず「西田前」の東芝から再スタート。社会インフラにIoT技術を組み合わせた「総合電機」の価値はこれからも求められるはず。

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