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LINEがAIを開発する狙いとは。出澤剛社長に聞く

LINE使ってAIが学習
 LINEは親会社の韓国NAVERと共同で、人工知能(AI)基盤「クローバ」を開発している。今夏にはクローバを搭載した自社開発スピーカー「ウェーブ」を投入する予定だ。対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE」で国内6600万人の利用者を持つLINEの出澤剛社長に、AIを開発する狙いや事業展開について聞いた。
                            

 ―AI「クローバ」を開発する狙いは。
 「ポストスマートフォンを見据えた取り組みだ。音声認識の技術などが発達しており、コミュニケーションはディスプレーに触れるのではなく音声でやりとりする時代が来ると思う。それを司(つかさど)り、AIによって賢くなる基盤は次世代における最大のプラットフォームになる。シリコンバレーの大企業などとの競争に挑戦する」

 ―クローバの強みは。
 「NAVERは検索技術、我々はタスクを実行するアプリ『ボット』とAIを組み合わせる技術などを持つ。AIに学習させるデータとしては対話アプリ『LINE』が膨大な利用者を持っており、そこから質の高い大量のデータが得られる。AIを通じて利用者に提案するサービスを自社で持つ点も強みだ」

 ―AI搭載スピーカー「ウェーブ」を自社で開発する理由は。
 「オープンプラットフォームであるクローバに対し、端末・コンテンツ企業の参加を促すため、ウェーブはクローバの使い方を示すショーケースになる。すでにソニーモバイルコミュニケーションズなどとは提携することで基本合意しており、連携して多様な端末を開発していく」

 ―LINEを入り口に多様なサービスを提供するスマートポータル構想を成長戦略に掲げていますが、AIとどう関連付けますか。
 「将来はスマートポータルの入り口がクローバを搭載したスピーカー端末などに変わる。音声によるコミュニケーションを通じ、利用者に最適化したサービスを提供できるようにする」

 ―同構想のサービスとして期待される電子商取引(EC)分野では、2016年に複数のEC事業から撤退しました。
 「EC分野は引き続き大きな市場と認識しており、まだ本格的には進出していない領域と考えている。多様な取り組み方を検討している」

 ―企業向けにLINEを活用した顧客対応サービスを試験提供するなど、法人事業を強化しています。
 「生活におけるコミュニケーションの中で、企業とのやりとりが占める割合は大きい。その意味で(企業が消費者とLINEでやりとりする仕組みを導入することは)スマートポータル構想においても重要になる」

【記者の目/ECのサービス充実カギ】
LINEは「AI搭載の通信端末」を入り口として多様なサービスを提供する構想の実現に向け、大きな一歩を踏み出した。一方、通信端末を介したサービスとしてECは大きな市場を持つ。AIの開発と同時にEC分野のサービスも充実できるかが、成功に導く上で重要になりそうだ。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2017年3月30日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
海外では企業によるフェイスブックのメッセンジャーを利用した「ボット」サービスがかなり拡充してきています。日本国内ではLINEのボットサービスの方が浸透している印象ですが、これからさらに利用シーンが増えそうです。

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