ライフネット生命・出口会長の「偶然を呼び込む秘訣」とは?

新たな出会い待つ人生の黄金期

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 ―著書の『50歳からの出直し大作戦』では50代が起業・独立に最適としています。
 「算数で考えれば、50代が人生の黄金期であることが分かる。自分の足で人生を歩き始めるのを20歳と考え、80歳まで生きるとすると、ちょうど中間が50歳になる。経験も積んでビジネスのノウハウも社会的信用もある。子どもがいたとしても成長して、将来コストをある程度は計算できる年齢だ」

 ―なぜ皆さん、そのように考えられないのでしょうか。
 「社会常識が大きいだろう。人口構造が変わったのだから、働き方もそれに合わせて変えていくべきだ。だが、日本では高度経済成長にできあがった枠組みでの思考を捨て切れていない。逆に言えば、日本は希望に満ちあふれている。何も変えてこなかったんだから。例えば定年制。世界の先進国の中で、定年制があるのは日本だけ。働いて健康寿命を伸ばすことは、介護問題や社会保障費の増大の解決にもつながるはずだ」

 ―同書では50代で起業した6人と対談しています。
 「1部上場企業のトップもいれば、趣味の延長で商売を始めた人もいる。資格を生かして独立した人もいる。組織を大きくすることだけが起業の目的ではない。背景が異なる6人との対話を通じて、多様な生き方があることを示したかった。6人の共通点を挙げるとすれば、本人が生き方に納得しているということだろう」
 
 ―起業する予定がなく、結果的に起業した人が多い印象です。
 「人生、計画的にはいかない。私が起業したのも偶然。起業は大変だが、起業後もバタバタの連続で、計画どころではない。唐の李世民の言行を記録した『貞観政要』にも『創業と守成いずれが難きや』とある。創業と事業を固め守ることはどちらが難しいか。時代を超えた永遠のテーマだろう」
 
 ―出口さんは58歳で起業しますが、前職の日本生命保険では49歳で左遷人事、55歳で子会社に出向になりました。
 「仕事で干されても、人生では取るに足らない。仕事よりも大切なものがある。1年は8760時間あるが、残業が多い企業でも労働時間は2000時間超。通勤時間を含めても、仕事の占める時間の割合は3割程度に過ぎない。結局、人間は仕事よりも食べて、寝て、ともに遊んで過ごす友人やパートナーの存在が大切だということを物語っている」
 
 ―起業しなければ何をしていましたか。
 「タラレバの話は分からないが、非常勤で関わっていた東京大学の総長室アドバイザーを続けていたのでは。アドバイザーに携わったのも偶然。私の知人に小宮山宏総長(当時)の後輩がいて、遊びに行くから一緒に来ないかと言われて付いていったのがきっかけ。昼食を一緒に食べていたら、ぜひ手伝って頂けないかと」
 
 ―偶然を呼び込む方法はあるんですか
 「ない。ただ、誘われたら、なるべく断らず、出向くようにしている。面白くなかったら、帰ればよいだけだから。それよりも、新しい出会いが待っている可能性が高い」
(聞き手=栗下直也)
【略歴】出口治明(でぐち・はるあき)72年(昭47)京大法卒、同年日本生命保険入社。企画部や財務企画部で経営企画を担当。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。06年ネットライフ企画設立、08年に生命保険業免許を取得後にライフネット生命保険に社名を変更。13年会長。三重県出身、68歳。『50歳からの出直し大作戦』(講談社)

日刊工業新聞2017年3月20日

COMMENT

栗下直也
デジタルメディア局DX編集部
記者

出口さんは何度か取材させていただき、取材以外でもお会いしていますが、相手が誰であろうと常にフラットな視点で接し、発言も全くぶれないところは記者としても一個人としても、尊敬しています。

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