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カルロス・ゴーンがアライアンスの過去・現在・未来を語る

小型商用車でルノー・日産・三菱自が技術共通化
カルロス・ゴーンがアライアンスの過去・現在・未来を語る

ゴーン氏

 仏ルノー・日産自動車連合は14日、4月1日付で小型商用車(LCV)事業部門を新設すると発表した。大型スポーツ多目的車(SUV)、商用バン、トラックの開発や生産でシナジーを引き出し、LCV市場で拡販を図る。将来は日産傘下の三菱自動車も同部門に参画する。

 開発の分担や工場の相互利用、技術の共用化でコスト削減を進める。各ブランドを維持しながら市場や商品を相互補完する。商用バンやトラックの他、日産の「アルマーダ」のようなフレーム構造のSUVも同部門の対象とする。ルノーと日産はすでに商用バンやピックアップトラックでプラットフォーム(車台)を共用している。

 2016年の日産のLCV販売は世界で81万5490台。ルノーは露アフトワズを含め44万3931台、三菱自は24万8000台を売った。カルロス・ゴーン会長は「各市場でのリーダーシップを拡大する」としている。

日刊工業新聞2017年3月15日



自らのテリトリーを越えることを恐れない


 -三菱自動車を仲間に入れて、ルノー・日産自動車アライアンスとして業界トップグループに入りました。他のトップグループと比べた優位性は何でしょうか。

 「他のグループに比べはるかに多様性が高い。アライアンスは3社がひとつになっているが、他のグループは企業の数では1社だ。ルノーも日産も三菱自動車も自立性を持ち、それぞれに戦略がある。だからこそ、ぶれない活動ができる。はるかに多くのアイデアが発想できる」
 
 「ルノーは主に欧州とロシアとブラジルでプレゼンスが高い。日産は北米、中国、日本で強く、三菱自は東南アジアで強い。強みが多様化しているのは利点だ。消費者にとっていいことではないか。スケールがあるからコスト効率化でき、価格設定も競争力が高いものになる。商品群も広くなる。違う会社が複数のブランドを扱っている。1社が複数のブランドを扱うよりアライアンスの方が豊かだ。これがアライアンスならではのことだ」

何年もの準備が必要


 「アライアンスの文化はまさに協業の精神だ。日夜各社が協力しているのがアライアンスだ。難しいのはわかるだろう。というのは業界で成功している例がないからだ。買収したとしても、買収する側とされる側の関係で問題が発生する。アライアンスは複雑で難しいことだ。必ずしも成功はしない。各自動車メーカーが同じ傘で協力してプラスの生産的な協力を実現している」

 「こういった複雑な領域で成功したのは、サプライヤーやハイテク企業、IT企業と協力する上で利点だ。ダイムラーとも多くのサプライヤーともうまくいっている。アライアンスの文化があるからこそ、アライアンスの従業員は、開発部門も購買部門もマーケィング部門も慣れている」

 「コンフォートゾーンを越えるのに慣れている。自らのテリトリーを越えることを恐れない。必要なものに手を伸ばすことを恐れない。そのために他のメーカーと協力できる。これは大きな優位性で文化の一部だ。一朝一夕ではできない。何年もの準備が必要で心構えも醸成しないといけない」
 
 -今アライアンスは複雑だとおっしゃいました。三菱自が加わったことでメンバー間の関係はより複雑になりませんか。
 「大きく複雑化するとは思わない。なぜなら全く同じ関係を適用するだけだ。ルノーと日産の関係のルールを三菱自に適用することだ。ルールは変わらない。若干微調整は必要かもしれないが。三菱自はスケールメリットを享受できる。三菱自は大きな見返りがあるからアライアンスに適用したいと考えている」

ブランドが混同されることは全くない


 -アライアンスのメンバーが増えると、各ブランドの個性維持とシナジー追求の両立が難しくなりませんか。
 「ルノーと日産の関係は17年間維持してきた。現時点でブランドが混同されることは全くない。お客様が比較検討をしないのだ。日本と米国は日産の存在感が高くルノーが低いから簡単だが、欧州は二つのブランドが存在して、きちんとブランドを確保している。混同されていない。重複もしていない」

 「ルノーと日産で証明してきたからこそ、三菱自でも証明できる。自信がある。だからこそ、三菱自がアイデンティティーを維持すると主張してきた。だから益子(修社長)さんに(社長に)残ってもらった。益子さんは三菱自のシンボルだ。混乱はない。社風もそのまま尊重しながら、ブランドの中身も変えない」

 「シナジーを生み出すと言っているのは効率化によるシナジーだ。コストや投資の効率化、専門性の共有などだ。それでいて各ブランドは社風に応じて仕事をしていく。その条件があるからこそ、混乱のリスクを避けられる」

三菱自は大きく成長できる


                 

 -三菱自会長に就いて1カ月が過ぎました。改めて三菱自の潜在力をどう見ますか。また新たに支援が必要だと思うことありますか。
 「二つの潜在力を持っている。会長になる前から分かっていたことだが。1つは大きく成長できることだ。ここ数年、年販100万台で横ばいとなっている。ブランドの潜在力ははるかに大きい。次期中期計画を策定して、益子さんの指揮の下で(成長を)実現できる。次期中期計画はこの会社を拡大し、成長させることが目標の一つだ」

 「日産もルノーもサポートできる。なぜなら、三菱自は多くの市場で販売しているが、プレゼンスが低いところがある。例えば、米、欧、ロシア、ブラジル、中東だ。ブランドにとって潜在力がある。第二は利益だ。購買部門を共用すれば、かなりのシナジーを三菱自にもたらす。100万台のメーカーが、同じやり方で1000万台のような購買はできない」

 「技術へのアクセスも増える。自社で開発する必要がなくなり、かなり節減が見込める。三菱自は生産を委託している地域がたくさんある。アライアンスがはるかにいい条件を提示できる。もっと効果的な条件で生産ができる。原価低減を通じた利益も好機だ」

 「もちろん実現しないといけない。アイデアが足りないと言うことはない。三菱自をどう回復させるか、より高い成長、利益を上げるために、どうするかのアイデアはたくさんある。益子さんはこれを意識している。なぜなら、私がV字回復を期待しそれをサポートしていきたいと考えているからだ」

常にベストを目指すが、1位自体が目標ではない


 -5年後、10年後のアライアンスの姿をどうイメージしますか。
 「アライアンスが上にあって、主に共通の技術やプラットフォーム、サービス開発などをやりながら、各社がその下で、日産であれば『日産』『インフィニティ』『ダットサン』、ルノーであれば『ルノー』『ダチア』『ラーダ』、三菱自であれば『三菱』というブランドを持ち、ビジネスを中心に集中して取り組む。こんな形の仕組みになるだろう。各社は個別の会社として存続し、自立性を持って事業をする。それでいて基本的なビジネスの要素は共同開発をする」

 -ゴーンさんの経営者としてのゴールは何ですか。
 「どのような経営者であれ、目標は持続可能性を実現することだ。会社と業績の持続可能性だ。会社の成長と利益と健全性を維持することが第一だ」

 「二つ目の目標は、常にベストを目指すことだ。魅力ある車、サービスを魅力ある価格で提供する。通常はベストな人がサイズが大きい。いい仕事をしてない会社が業界をリードすることはなかなかない。1位自体が目標ではない。それは結果だ。いい仕事をしたからこそ結果的に1位になる。いい戦略と実行力あってこそだ。『私は1位になりたい』と言えるようなことではない。だが1位になる可能性はある。コスト、品質、技術、戦略で戦っている」

 「今はトップ3のグループだ。フォルクスワーゲントヨタ自動車、当アライアンスで年販規模のわずかな差があるが、その差に意味はない。意味があるのはスケールだ。他のメーカーに対して、ハンディキャップを持たないことだ。スケールは利点だ。1位になることはうれしい。どうでもいいとは言わない。でも結果だ」

日刊工業新聞2017年2月9日インタビュー記事から抜粋

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
1999年の提携から共同購買や車台の共用でシナジーを引き出してきた。2014年には開発や購買、生産の機能を統合してさらに関係を深めた。今回はビジネスユニットでの協業となる。両社の関係は新たなステージに入ったと言える。

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