東芝が株式を売却する東芝機械、社長交代へ
三上常務が昇格。東芝グループからの独立で新しい経営体制で
東芝機械は4月1日付けで、三上高弘取締役常務執行役員(57)が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する人事を固めた。飯村幸生社長(60)は会長兼最高経営責任者(CEO)に就くとみられる。海外事業の拡大に伴う企業統治体制の強化や、東芝の巨額損失問題による東芝グループからの独立などの理由から、新経営体制に移行する。
三上取締役は主力の射出成形機とダイカストマシンの成形機事業の責任者を務め、海外事業の拡大や収益改善に貢献してきた。飯村社長はリーマン・ショック直後の2009年に就任。市況が急変する中、いち早く業績を回復させた。併せて、射出成形機を中心に海外生産体制を整備。グローバル化を推し進めた。
日刊工業新聞では2016年12月に取締役常務執行役員成形機ユニット長・三上高弘氏(当時)をインタビューしていた。
―射出成形機業界の再編は起こりますか。
「国内だけで20社弱の射出成形機メーカーがあり、市場規模で考えると多い。だが、得意分野は各社ごとに異なり、専業だったり、一事業部だったりと運営形態もそれぞれだ。そう考えると業界の再編は進まないと考えられる」
―可能性はほとんどないのでしょうか。
「ただ、海外市場が伸長する中で、各社の体力は厳しい。得意分野の違いからシナジーを出しやすく再編に取り組みやすい環境であるのは確かだ。当社は自動車向けの大型が得意で、スマートフォン(スマホ)など向けの小型のところとは組みやすい。それでも当社で考えても、成形機事業部を切り出して合併するには事業部の貢献度が大きく難しい。共同調達や技術・開発などのアライアンスで連携していくようなやり方で緩やかな連携はあるのではないか」
―東芝機械の今後の姿勢はどうなりますか。
「当社は自動車関連に強い。この強みを伸ばすことが、まず我々のすべきことだと考えている。とはいえ、日系射出成形機メーカー各社共通して自動車関連の強化を打ち出してきた。当社は自動車の軽量化への対応と、センサー類、樹脂レンズなどの光学系へのアプローチを進めている」
―具体的には。
「ナノ加工事業部の精密金型技術と成形機の技術を組み合わせ、高精度、高生産性といったユーザーの課題に応えた提案をしていくのが一つ。軽量化へは発泡成形や新材料対応など役立つ技術を活用する。機構や制御的な工夫、ノウハウを生かして差別化していく。発泡成形は自動車メーカーの注目度が高く、開発案件が増えている。熱に強い樹脂材料が増えてきて軽量化への貢献度が増えた。部品の樹脂化の流れをうまく取り込む」
―足元の状況をどう見ていますか。
「インドネシアあたりで需要が戻る兆しが出ている。チャンス・ロスがないよう、タイの生産拠点などで準備していく必要がある。東南アジアはやはり自動車向けが多く、品質が問われる。生産拠点としての質を高める。米国とメキシコは次期大統領の動きを見守りつつ、基本路線としてサービス力を高めたい」
【記者の目/提案・サービス力の底上げ必要】
三上取締役の言う通り、自動車業界向けは各社が強化している激戦区だ。自動車は電気自動車(EV)や自動運転車といった進化で取り巻く全てが大きく変化する可能性がある。これまで東芝機械が自動車を得意としていても安穏とはしていられない。持ち味をフルに生かした提案力、サービス力など全体的な底上げが必要だろう。(石橋弘彰)
三上取締役は主力の射出成形機とダイカストマシンの成形機事業の責任者を務め、海外事業の拡大や収益改善に貢献してきた。飯村社長はリーマン・ショック直後の2009年に就任。市況が急変する中、いち早く業績を回復させた。併せて、射出成形機を中心に海外生産体制を整備。グローバル化を推し進めた。
【略歴】三上 高弘氏(みかみ・たかひろ)82年(昭57)立命館大理工学部卒、同年東芝機械入社。13年執行役員、14年取締役執行役員。15年取締役常務執行役員。京都府出身。
日刊工業新聞2017年3月13日電子版
東芝機械・三上取締役「業界再編は進まない」
日刊工業新聞では2016年12月に取締役常務執行役員成形機ユニット長・三上高弘氏(当時)をインタビューしていた。
―射出成形機業界の再編は起こりますか。
「国内だけで20社弱の射出成形機メーカーがあり、市場規模で考えると多い。だが、得意分野は各社ごとに異なり、専業だったり、一事業部だったりと運営形態もそれぞれだ。そう考えると業界の再編は進まないと考えられる」
―可能性はほとんどないのでしょうか。
「ただ、海外市場が伸長する中で、各社の体力は厳しい。得意分野の違いからシナジーを出しやすく再編に取り組みやすい環境であるのは確かだ。当社は自動車向けの大型が得意で、スマートフォン(スマホ)など向けの小型のところとは組みやすい。それでも当社で考えても、成形機事業部を切り出して合併するには事業部の貢献度が大きく難しい。共同調達や技術・開発などのアライアンスで連携していくようなやり方で緩やかな連携はあるのではないか」
―東芝機械の今後の姿勢はどうなりますか。
「当社は自動車関連に強い。この強みを伸ばすことが、まず我々のすべきことだと考えている。とはいえ、日系射出成形機メーカー各社共通して自動車関連の強化を打ち出してきた。当社は自動車の軽量化への対応と、センサー類、樹脂レンズなどの光学系へのアプローチを進めている」
―具体的には。
「ナノ加工事業部の精密金型技術と成形機の技術を組み合わせ、高精度、高生産性といったユーザーの課題に応えた提案をしていくのが一つ。軽量化へは発泡成形や新材料対応など役立つ技術を活用する。機構や制御的な工夫、ノウハウを生かして差別化していく。発泡成形は自動車メーカーの注目度が高く、開発案件が増えている。熱に強い樹脂材料が増えてきて軽量化への貢献度が増えた。部品の樹脂化の流れをうまく取り込む」
―足元の状況をどう見ていますか。
「インドネシアあたりで需要が戻る兆しが出ている。チャンス・ロスがないよう、タイの生産拠点などで準備していく必要がある。東南アジアはやはり自動車向けが多く、品質が問われる。生産拠点としての質を高める。米国とメキシコは次期大統領の動きを見守りつつ、基本路線としてサービス力を高めたい」
【記者の目/提案・サービス力の底上げ必要】
三上取締役の言う通り、自動車業界向けは各社が強化している激戦区だ。自動車は電気自動車(EV)や自動運転車といった進化で取り巻く全てが大きく変化する可能性がある。これまで東芝機械が自動車を得意としていても安穏とはしていられない。持ち味をフルに生かした提案力、サービス力など全体的な底上げが必要だろう。(石橋弘彰)
日刊工業新聞2016年12月6日 一部加筆