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レノボと統合しても、富士通のパソコン工場が国内で生き残れる理由

IoTで革新、タブレットと交互に流れる“攻めの混流生産”
レノボと統合しても、富士通のパソコン工場が国内で生き残れる理由

見学者が後を絶たない島根富士通の拠点

 島根富士通(島根県出雲市、宇佐美隆一社長)は、IoT(モノのインターネット)技術を活用し、パソコンの生産革新に取り組んでいる。2016年度から、作業映像の分析や修理工程の見える化を始めた。同社の工場は混流生産や顧客ごとのカスタマイズ対応といった生産技術で先進的な手法を採用しており、多くの見学者が参考にしようと訪れる。今後、IoTや自動化を推進し、さらに進化させる。

 「1000回に1回、あるいは5000回に1回起きる不具合の要因を突き止めたい」と、品質保証部の高橋正志部長は話す。16年度上期から、組み立て工程の作業映像と試験記録(ログ)を相関分析する仕組みを導入した。

 不具合との関係が予想される工程を監視カメラで撮影し、大量のデータを分析することで、要因を見つける。ごくまれな不具合の要因は、人が生産ラインを観察するだけでは発見しにくいためだ。

 要因を見つけ、費用対効果を考慮して対策や不具合防止技術を導入するほか、製品の技術開発にも反映させる。

 また米インテルと協業し、不具合を修理している製品が工場内のどこにあるか迅速に把握できるようにした。修理中の製品のうち、出発時刻の早いトラックに載せる製品を優先的に修理して、定刻運行に間に合わせる。出荷の遅延を少なくすることで、輸送コストを従来に比べて30%削減できたという。

 ロボットによる組み立ての自動化も少しずつ広げている。最初はネジ締めやゴム足の貼り付け作業が中心だったが、力覚センサーをロボットに搭載して板金組み付けや基板のはめ込みもできるようになった。

 「基板をスライドさせて、カチッとはめ込むのは、従来のロボットでは難しかった」(高橋部長)という。新製品ごとにロボットのプログラムを書き換えなければならないため、費用対効果を精査して自動化の範囲を拡大する。

 他にも多様な生産革新に取り組んでいる。例えば組み立てラインでは、タブレット端末とノートパソコンを交互に流して作業している。組み立て時間の違う製品も交互に流せば、コンベヤーの速度を一定にできるからだ。

製品ごとにまとめて流すと、コンベヤー速度の切り替えに時間が必要になり、余計に時間がかかってしまう。「多品種少量生産への対応だけでなく、生産効率化にもつながる」(同)としており“攻めの混流生産”と位置付けて積極的に進める考えだ。

 一方で、富士通は中国レノボとパソコン部門の統合を協議中で、生産拠点の先行きも注目されている。パソコン事業会社の富士通クライアントコンピューティング(川崎市中原区)の齋藤邦彰社長は「匠(たくみ)の技がお客さまに受け入れられれば続けたい」と生産拠点の意義を強調し、存続を求める。

 島根富士通は世界の競争で勝ち残り、先進的な工場として機能し続けるため、今後も匠の技に磨きをかける。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2017年3月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 パソコンなど日本で消費するデジタル機器は国内で生産する方がキャッシュフローの回転率が高い。日本の人的資源は限られてくるが、生産性を上げる余地は果てしなくある。ポイントは『流れ改善』。世界企業でもインバウンドのSCMができていないところも多い。工場の中の加工時間はごくわずかで、消費者が使ってくれるまでのサイクルで無駄をいかに減らしていくかだ。これからモノの売り方によって製造手法も大きく変わる。スマホは大量頒布が前提で需要に応じて作る製品ではない。  日本のモノづくりが進化するキーワードは機能集約だろう。うまくいっているところは本社に頼らず、工場自らが営業し設計受注して仕事をとっている。製造現場に製品・設備などの設計人員が同居し、技術営業も一緒だったりする。自社にどういう力があるかも理解して意思決定できるのが機能集約の利点。なので事業部長級は最前線に置くべきだろう。  賃金の安い工場が強い工場ではない。弱い海外工場にすべてを移管し、国内を閉鎖するのは愚の骨頂。

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