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電動パワステ世界トップが見据える自動運転までのロードマップ

ジェイテクト、2030年ごろまでに「SBW」の量産化も
電動パワステ世界トップが見据える自動運転までのロードマップ

量産を始めたラックパラレル式のEPS

 ジェイテクトは世界28カ国・地域に約130拠点を展開する。現在の海外売上高比率は約6割。主力の自動車用ステアリング事業では中・大型車向けの新製品の生産ラインを日本と米国の工場でほぼ同時に構築中だ。主要取引先のトヨタ自動車に加え、国内外の完成車メーカーからの異なる要望に応えるべく現地生産を進めている。

 ステアリングは運転手のハンドルさばきを補助する装置。当初は油圧式が多かったが、ジェイテクトは1988年に世界で初めて電動パワーステアリング(EPS)を量産化。現在はステアリング全体で世界シェア26%、EPSで29%といずれもトップに立つ。

 「2017年は大型案件が連続して立ち上がる」。ジェイテクトの安形哲夫社長はこう意気込む。同社は「ラックパラレル(RP)」と呼ぶ新方式のステアリングの生産を始めた。

 これまで同社は主に小型車向けのコラム式や中型車向けのピニオン式EPSを手がけてきたが、特に北米で売れているスポーツ多目的車(SUV)やピックアップトラックなど中・大型車は油圧式が主流で、ジェイテクトは一部車種への供給にとどまっていた。

 この“空白地帯”を埋めるべく開発したのがRP式。従来品よりも出力を高める一方、ボールネジの採用などによって外径を約15%小型化した。RP式の量産化でEPSのラインアップが整う。同社は特に北米市場でのシェア拡大を見込んでいる。

 RP式の生産はステアリングの基幹工場である花園工場(愛知県岡崎市)に設けた専用ラインで16年末に始めた。17年夏には米テネシー州、18年には中国・福建省廈門(アモイ)市の工場でも生産を始める予定。
米テネシー州のジェイテクト工場

 日米中で順次新ラインを立ち上げるため、設備投資はかさむが、世界の自動車市場が拡大を続ける中、「シェアの維持だけでも相当の努力が必要」(安形社長)とみて、高水準の設備投資を続ける。軸受や工作機械など他の事業も含むジェイテクトの18年3月期の設備投資額は800億円規模と、17年3月期見込みと同等の高水準になる見通しだ。

 排ガス規制が世界的に強化される中、自動車部品は従来の油圧式から電動式への流れが加速している。パワーステアリングも油圧からEPSに置き換えると燃費性能を数%向上でき、エンジンを使わないため二酸化炭素の排出量も削減できる。

 さらにEPSをはじめとする電動部品は応答性に優れ、自動運転との親和性も高い。ジェイテクトは中長期の戦略として2030年ごろまでの自動運転対応のステアリングの開発目標を持っている。

 そこでは電気信号でステアリングを動かす「ステア・バイ・ワイヤ」(SBW)の量産化も視野に入れる。
(文=名古屋・杉本要)
日刊工業新聞2017年3月8日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
自動運転は日米欧など先進国から実用化が進むとみられる。ボリュームゾーンから先端分野まで、各国市場のニーズに合う製品ラインアップを整え、世界シェア首位の座を守る考えだ。

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