「スマホで通販」ポイント競争を制するのはどこだ?
首位の楽天に挑むKDDI系やYahoo!
『自分だけ感』をAI・データで最適提案
ポイント施策や会員制度は顧客に「お得感」を訴求する。サイトの継続利用を促し、流通総額を拡大する要になる。ただ各社の狙いはそこだけではない。
EC市場に詳しいコマースデザイン(東京都渋谷区)の坂本悟史代表取締役は「顧客を囲い込めば幅広いデータが集まる。それを基に人工知能(AI)が個人の趣味嗜好(しこう)や購買行動を分析すると(利用者にお勧めの商品などを表示する)リコメンドの精度が上がる。
利用者の購買意欲を喚起する購入しやすいサイトの運営につながる」と指摘する。ポイントなどでつながる他のサービスのデータも連携すれば、リコメンドの精度はさらに向上できるという。
総合ECサイトとしては後発のワウマはそこに大きな活路を見出す。KCFの八津川社長は「利用者にとって『自分だけ感』や『今だけ感』のある購入体験を実現したい。
データに基づいた形で表現できる。それは他のサイトもまだ提供しきれていない部分」と指摘する。顧客の購買履歴などはもちろん、会員制交流サイト(SNS)における旬なワードなどの情報も連携したデータ活用を進める。
一方の楽天もデータ活用を強化施策に据える。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「(データとAIの活用により)将来は音声認識を通じた商品購入を実現したい」と強調する。
個人の趣味嗜好などを把握したAIが顧客に合った商品を提案するシステムなどを模索する。実店舗で店員に相談して商品を探すようにショッピングを楽しめるようにする。
利用者が購入しやすいECを実現する取り組みとしては新たな端末を提供する動きも注目だ。アマゾンは16年12月、ボタン一つで日用品を注文できる端末を発売した。
新端末の提供についてはヤフーも「必ず対応したい。ソフトバンクグループ全体で取り組む」(小澤隆生執行役員)と意気込む。KCFの八津川社長も「KDDIグループとして可能性を探究する」という。
(葭本隆太)
日刊工業新聞2017年2月20日