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2017年度 自治体予算のポイント教えます《#08》

神戸市、京都府、大分県
**【神戸市】奨学金返還を支援 若者の起業・定住を促進
 神戸市は2017年度、若手起業家や地元の中小企業に就職する若者を対象にした奨学金返還支援制度を創設する。学生時代に受給した奨学金の返済負担を軽減することで、市内での起業や就職を促し、定住につなげる狙い。16日発表した17年度当初予算案に関係費4700万円を計上した。

 社会的課題を解決するために起業する35歳以下を対象にした奨学金返還支援制度は、起業家を支援する市の「神戸スタートアップオフィス事業」と連携して実施。起業を目指す人に絞った奨学金返還支援は珍しい。地元企業就職の奨学金返還支援制度は、航空機や医療といった成長産業分野の市内の中小企業に就職する新卒者が対象。

 いずれも奨学金返済額の2分の1を上限に年間最大50万円を3年間支給し、奨学金の繰り上げ償還に充ててもらう。3年以上の市内居住や市内での起業または就職を要件とし、17年度は両制度で各10人募集する。奨学金返還支援の基金を4月に設置。設置後に企業や個人から寄付を募る。

 市は若手社員の奨学金返済を支援する市内中小企業への補助制度も創設。兵庫県や県内の中核市との協調事業で、企業の負担額の一部を年間最大6万円、3年間補助する。

【京都府】IoT活用の中小連携を支援


 京都府は2017年度に中小企業間の情報共有化によるモノづくりを支援する。IoT(モノのインターネット)を活用し、受注、設計、生産進捗(しんちょく)、工作機械の稼働状況などの情報を共有化し、中小企業の連携を促進する。

 情報や工作機械の共有化に必要なIoT技術の導入設計、共有化のルール策定、システム整備の経費を補助する。中小企業の生産性や競争力の向上を支援する。17年度当初予算案に中小企業シェアリング事業として8000万円を計上した。

 中小企業の共同受注グループなどが製品設計データや各社の工作機械の稼働状況といった情報を共有するシステムを整備し、同時分散加工による短納期化などを想定している。

【大分県】企業誘致促進助成に12億円


 大分県は戦略的、効率的な企業誘致の推進や同県版の第4次産業革命への挑戦を盛り込んだ2017年度当初予算案をまとめた。大分臨海工業地帯6号地(大分市)に立地する製造業に対して補助制度を創設するなど企業立地促進事業に12億4711万円、18年2月に完成を目指す玖珠工業団地(大分県玖珠町)の造成着手に43億9540万円を計上した。

 商工関連費は前年度比6・4%増の504億3424万円となった。県内企業が行うIoT(モノのインターネット)を活用したビジネスモデルの創出に向けて6860万円を計上し、IoT推進ラボを設立して支援する。県内で飛行ロボット(ドローン)の産業集積を推進するため「ドローン産業協議会」も設立する。研究開発支援に取り組む関連事業に1863万円を充てた。

 一般会計総額は同0・1%増の6098億600万円で4年連続プラス予算を編成した。

《#07》大阪市、石川県、佐賀県
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日刊工業新聞2017年2月17日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
神戸市の奨学金返還支援制度。奨学金を奨学金で返すみたいな感じもあるが、うまくいけばモデルケースになりそう。 ただ、起業しても成功するとは限らないので、そのリスクを行政としてどう取るか。でもそれを言い出すと、企業向け補助金とかも同じようなものですけどね。

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